2020.9.292億7225万円の随意契約議案を撤回

市は「契約内容を精査する必要があるため」と説明

 

 市は16日、市議会9月会議に上程していた(株)九電工長崎支店への2億7225万円の随意契約の議案を撤回し、議会は全会一致で承認した。撤回議案は、小中学校の児童生徒に1人1台のタブレット端末を配備する「GIGAスクール構想」の設備工事費だ。市は、「高速大容量の通信ネットワーク構築のため、市ケーブルテレビ施設通信機器の更新が必要」と説明し、議案上程日の即日採決を求めていた。しかし、議会は「随意契約の根拠がない。入札制度の否定」などと反発し、即日採決は見送られた。一連の流れの中で突然の出来事だった。撤回の理由について市は、「契約内容を精査する必要があるため」とした。

 

 市が撤回した議案は、市議会9月会議の初日10日、議案上程日に即日採決を求めたもの。議員は「なぜ入札をせずに随意契約にしているのか」と意見し、紛糾した議会は即日採決に反発した。随意契約先は、(株)九電工長崎支店(長崎市)で、4月から市ケーブルテレビ指定管理者となった光ネットワーク(株)の関連会社だった。

 議案上程日10日の質疑で、音嶋正吾議員は「高額の契約を随意契約で可能という根拠を示してもらいたい」と意見した。市財務規則では、随意契約は「30万円から130万円を限度額とする」と規定されているためだ。市は「地方自治法施行令第167条の規定を適用しているので問題はない」とした。

 町田正一議員は「設備工事で指定管理者が親会社に全て随意契約で発注するとなれば、入札制度そのものが必要ないではないか。これを認めてしまえば悪しき前例となる。まかり通れば行政として失格だ」と強く批判していた。

 今回の議案撤回説明を受けて、中田恭一議員は「議案を撤回したが、その後のスケジュールに遅れは起きないか」と質問した。同構想では、来年3月頃までには生徒らにタブレット配布の準備を進め、4月からはタブレットを活用する授業も始まるからだ。市は議案上程の段階で当初、即日採決の理由に、作業工程の短縮を挙げていた。工事の遅延を回避したい考えも含まれる。

 企画振興部長は「工期は、随意契約が成立した場合は来年3月末で完了予定としていた。今後の流れで入札を予定しているので、工期は伸びるものと考えている。しかし、早急に契約を行い、工期遅れなどの影響を少なくするように進めたい」とした。

 中田議員は「影響を少なくするという発言には、若干の心配がある。工事が間に合わなければ、学校でのタブレット使用を遅らせるということか」と問うた。企画振興部長は「現在の通信環境では、小学校で1人1台の端末を全て稼働させると、通信容量が少ないため影響がある。市教育委員会と協議し、同時使用台数の調整をしながら影響が起きないようにする」と説明した。