2020.1.29黒崎砲台跡に無断侵入者が多発

崩落危険のため固定バリケードを設置するなど、市は立入禁止を強く警告

 

 昨年11月末あたりから、当紙に黒崎砲台跡への無断侵入者が増加していると市民からの報告が相次いだ。同跡地は壁や天井の劣化が激しく危険との理由から立ち入り禁止区域となり、また、国定公園の指定地であるため、無断でイベントなどの活用も禁じられている。報告では、昨年10月頃に同跡地内でたき火を行う行為が問題となって以降、無断侵入者は後を絶たないようだ。市では固定バリケードを設置するなど対策を講じている。また、崩落の危険から「イベント等の使用申請があっても、原則として許可はしない」と厳しい対応を見せた。

 

 同跡地は島の歴史的景勝地で、かつては「東洋一の砲台」と呼ばれた。実戦では一発も砲を打つことなく解体撤去され、戦争当時の歴史的背景や地政学的な意義などを持つ貴重な戦争遺跡となって以来、多くの観光客が訪れている。

 しかし、2005(平成17)年3月20日に発生した「福岡県西方沖地震」により、砲台内の環境は一変した。当時、本市は地域によっては震度5強を記録した。この影響により砲台内の天井や壁にはひび割れが生じ、落盤の恐れがあることがわかった。市観光課は落盤の危険箇所入口に「立入禁止」の看板と簡易バリケードを設置した。

 しかし、簡易バリケードを外し侵入する人が後を絶たないため、昨年10月31日に固定バリケードを再設置することにした。「落盤の恐れがあり安全を確認できません。やむを得ず、ここから立入禁止とします」と看板に明記し、危険を警鐘している。

 その後、無断侵入者は減るかと思われたものの、バリケードを設置していない裏側から侵入している形跡があり、市は同跡地一部の土地所有者と協議の上、今月15日に新たにバリケードを設置している。しかし、市観光課は「それでも侵入者がいる場合、市としてこれ以上の対応は難しい。表側から入るのが一般者や観光客であり、裏側から侵入するケースは少ない。バリケードなどの設置があるにも関わらず、それらを無視して侵入すること自体、モラルに欠ける行為だと考えている」と、対策に苦慮している旨を語った。

 

昨年起きた砲台内でのたき火行為

 昨年10月未明、砲台内でのたき火行為を問題とした市民からも当紙に投書が届いていた。「砲台でのたき火は非常識」とし、「たき火の場所は確か私の記憶では立入禁止になっている所だと気付いた。黒崎砲台の建設には、戦時中に多くの方々が苦労して従事しておられたと聞いている。実戦では一発も敵に対して砲を放つことなく、解体撤去の運命になり、その姿が朽ち果て今に至っている。島内の他の景勝地と違って、島民なら誰もが『心に残る遺作』として大事にしなければと考える地ではないかと思う」と、歴史的価値を説く。

また「この地は戦争当時の歴史的背景、地政学的意義などをもっと発信して、教育や観光に生かすべき地ではないか。今後、こういうことが続かないことを祈りたい」として、同跡地のレジャー化した姿を目にした不快な思いを訴えた。

 さらに市議会12月会議の一般質問では、植村圭司議員が「たき火行為があった同跡地は、公と私の用地が混在している。使用許可を含め、市の管理はどうなっているのか」と問うた。

 この時の行為は、当事者らによるインターネット(SNS)投稿で全国に向けて配信されていた。今回の情報を寄せた市民は「配信した画像を見て砲台跡に興味を持ち、そこから無断侵入が増えたのではないか」と考えを話した。

 

国定公園に指定される砲台跡周辺

 同跡地を含む黒崎半島一帯は、国定公園に指定されている。自然公園内の景観を保護するため、建築物の新築や土地の形状変更など一定の行為に規制があり、各イベント使用においても、市や県(県知事)を通じて国への使用許可と届出の申請が必要となる。

 また、国定公園内の私有地を使用したイベントについても、所有者のみの許可での使用は禁止されている。必ず市や県への申請をせねばならない。

 自然公園内でイベント使用の申請がある場合の対応について、市観光課は「通常では、イベント発案者は、一部土地所有者と市担当課に使用許可申請をし、申請書を県担当課に提出する流れになる。最終的な許可は県から発行される」と説明するが、「同跡地でのイベントとなれば、県に申請書を提出する以前に、市の判断で許可しない可能性が高い」と説明した。立入禁止区域内の崩落危険を考えての理由になるようだ。

 同跡地の場合、表側入口から砲台内バリケード付近までの通路が市有地となり、かつて砲台が設置されていたフロアスペースを含め、裏側入口付近までが個人所有の私有地となる。

 ただ、国定公園指定地の場合、私有地を含めて県の許可書がなければイベントなどの使用はできない決まりがある。しかし、同跡地では景観を損なう以前に、崩落の危険がある認識が必要だ。