2020.1.21財政状況は市民も知るべき

 市は年末に、5年先までの市財政状況と予想を示す中期財政計画を公表した。同計画の作成時期は毎年11月で、市ホームページ上で誰でも自由に見ることができる。

 ただ、同計画の公表は、市民の目に留まるのが難しい。市の広報は、ホームページのトップ画面にある新着情報ですぐに気が付くが、なぜか同計画は新着としてトップページに示されない。

 市民は市政の運営や財政状況を知る権利があり、知ることによってより良き市政へとなるよう、民と官の連携が生まれてくる。また、市は市民に対して市政運営に関するあらゆる情報を知らせねばならない義務がある。ならばなおさら新着情報に掲示すべきである。これでは意図的に検索せねば見つけ出すことはできない。「密かに公表」では、情報公開の親切心に欠けると言えないだろうか。

 同計画では、昨年度から令和5年度にかけての財政状況が非常に厳しいものであることがわかった。さらに、昨年度に公表していた財政状況予想値からも大きく下方修正され、わずか一年足らずの間でさえも、予想していた財政計画通りの市政運営ができなかったことが示される。

 例えば、財政調整基金などの残高では、令和元年度分の昨年度予想は28億1000万円だったが、今年度では18億7000万円へ下方修正。令和5年度分の予想は、昨年度には16億6000万円だった残高が、今回公表では8億1000万円にまで下方修正となっていた。

 歳入から歳出を差し引いた令和5年度までの財政収支見通しでは、本年度以降は財政がマイナスに転じ、毎年不足額が生じる。それを補填するために財政調整基金などが使われる。これにより先に挙げた財政調整基金が毎年のように目減りしていくのが、今後の本市財政予想になる。この状況は決して楽観することはできない。

 一般家庭を例にすれば、毎月の生活費や子どもへの学費や仕送りが毎月の給料を超えるため、貯金を切り崩して毎月をしのいでいるようなもので、いずれ貯金も底を尽きる時がくる。毎月の給料やボーナスもこの先、安定して得られる保証はない。市政に置き換えても同様だ。地方を支える国の財政も厳しいことから、この先は地方への影響もあると考えておかねばならない。

 市は昨年、多くの予算計上を挙げている。観光産業活性のテコ入れにイルカパークのリニューアルと運営費。市ケーブルテレビ指定管理移行問題に関して、本来ならば不要な3300万円の海底ケーブル契約費と、指定管理業務譲渡に1億5000万円。計画は頓挫したが、富裕層誘客として1億4000万円のリゾート計画もあった。計画の見直しとなった健診センター建設用地の取得に向けた予算。今後発生する東京事務所開設のための予算など。ずいぶんと羽振りが良い予算計上が並ぶが、公表された中期財政計画を見て、将来的に財政は大丈夫なのかと疑問が起きる。

 財政予想は今後5年後までマイナスに転じ、それ以降もマイナスが続くかもしれない。市民も市政運営の一員であり主役だ。堂々と市民の目に触れるように公表するべきであり、厳しかろうが楽であろうがオープンにすべきものだ。今回の市中期財政計画の内容を見て、将来に向けた本市財政に一抹の不安を覚える。

 市政を預かる側が、厳しい状況や気まずい事柄に蓋をして見えないようにするやり方では壱岐のためにならず、負の問題を今の子ども達ら次世代に押し付けていくだけにしかならない。

 今後も新たな施設建設や新規事業など、多額の予算計上が予想される。しかし、財政状況を冷静に判断できる市議会や、将来に負担を抱かせない冷静な行政運営を行わねば、財政不足の深刻さはよりましていくのではなかろうか。どのような施設建築や事業も計画案の公表は自由だが、市議会の議決を得ねば何も実現に至らない。市民から選ばれた議員は、将来を見据えた市政運営のあり方に目を凝らしてほしい。(大野英治)