2021.7.13市民の「あきらめ感」を払拭せよ(記者コラム)

次期市議選、市の将来を見極める目で一票を選ぶことが必要

 25日告示、8月1日投開票を迎える市議会議員選挙に向け、各候補予定者らの動きが活発になってきた。一部の予定者は自身の政治活動を理解してもらうために新聞折り込みなどによるチラシの配布を始め、その他の予定者も自身が考える政策をしたためたチラシを片手に、全島をくまなく回っているとの話も聞く。昨年4月の市長選では、現職に対して新人候補者がわずか329票差まで迫るせめぎ合いを繰り広げた。4月末には、住民側が市長に対して現市政のあり方を問うリコール署名活動が巻き起こり、6603人の署名が集まった。そして来月には今後の4年間を託す市議会選挙が行われる。今、この島では何かが動こうとし、何かが変わろうとしている。

 

 「今の市政は、市長や職員ばかりがだめじゃなかと。議員がしっかりせんけん、つまらんと」。

 この1年間、いや、特に5月ごろの市長リコール運動の最中に、何度この言葉を耳にしただろうか。市民の間でも、一度は耳にしたことがあるかもしれない。市執行部側が提示する議案や、現在であれば行財政改革にある市民サービスの低下、いわゆる「補助金削減」などを採決したのは議会であり、各議員の判断によるものだ。

 この流れから見れば、執行部に対して議会がもう少し議案の追及や補助金削減の根本的原因、このような状況に至った経緯などを議論で突き詰めれば、「議員がしっかりせんから」などと、市民から不満の声は聞こえてこなかったのではないか。さらに、議員自らの考えはともかく、それ以上に市民の声、民意にもう少し耳を傾けていればよかったのではないか。「議員は市民の代弁者」といわれる。議員は市民の代表であり、目線は常に市民に向いていなければならない。しかし、現状の議会は、市長や職員幹部の執行部側に目を向けているのではないかとさえ思える時がある。

 「いや、そうではない」と自信を持って言い切れる議員はいるのだろうか。自分は常に市民の声を聞き、代弁者たる発言をし、市民生活の安定と安心とともに職務を全うしていると胸を張って言えるだろうか。市民の目には、そのように見えていないからこそ、議会に対しての不満やあきらめが蔓延する。すべての市議会本会議を見てきた記者も市民の声に同感であり、時には「あきらめ感」が頭をよぎることは多々あった。

 今回の市議選では、10人もの新人候補予定者が市議選説明会に足を運び、その中から7人が出馬の意向を固めている。2013(平成25)年に議員定数が16人になって以降、最大人数の新人候補予定者数となる。それぞれが「今の市議会を変えたい。市民のために働きたい」との強い思いから、出馬の決意を固めたはずだ。市民の議会に対する「あきらめ感」を打破したい思いもあろう。

 これまでに市長が言ってきた「執行部と議会は車輪の両輪であるべき」を、現職議員は実践していることは分かる。しかし、両輪であることが主となり過ぎて、いつの間にか「馴れ合い」になっているように見える。市議会閉会後はほぼ毎回、市長ら三役と市職員幹部、議員らで飲酒を伴う会食をしていた。会食自体が悪いとは言わないが、この行為は「仲良しクラブ」的な馴れ合いを生むことになる。振り返れば昨年12月、新型コロナ感染防止の最中でありながら、議会閉会後に慣例となった会食を開く失態を犯した。もはや馴れ合いだと言われても反論の余地はなかろう。

 しかし、現職議員のすべてを非難する気はない。これまでの4年間、研鑽を積み多くの施策を判断してきた働きがあればこそ、今の我々の生活がある。また、議員の職務がどれほど重く、大変なのかもわかる。

 一方で、新人候補者予定者はこれまでにどれほど市政についての研鑽を積んできたのか。報酬や名誉、改革の気持ちだけでは到底務まるものではない。多くの声を聞いて学び、市政運営の仕組みを知らねば、たとえ議員になったとしても役に立たないまま月日は過ぎる。立候補を決意するまでに、どれほどの回数、傍聴のために市議会へ足を運んだのか。市ホームページで公開される議案資料に目を通したことはあるのか。これらは仕事のごく一部でしかない。しかし、議員職を理解でき、自己研鑽にはなる。

 参考までに、4年前の市議選結果表を掲載した。この4年間を振り返り、それぞれの得票数とその後の働きぶりは見合っていただろうか。

 少々厳しいことを書き連ねたが、現職も新人予定者も本気で市民のために働きたいと思うのであれば、最低限「議員とは何なのか」を考えてもらいたい。新たに始まる4年間を前に期待を込めて言わせてもらった。「市民は何を思っているのか。民意は何なのか」が基本だ。来たる市議会選挙での一票で市民は「親戚だから」「知り合いに頼まれたから」「地域の候補者だから」など旧態依然の考えを捨て、真に生きる票を投じ市の明るい将来へつなげてもらいたい。