2022.10.11どうなる、認定こども園
市民団体は反対の署名を提示、白川市長「市は当事者ではない」
市民団体「壱岐のこどもの健やかな育ちを守る会」(山内裕司、割石賢明共同代表)は先月27日、郷ノ浦町で建設計画が進む「認定こども園の建設予定地反対」を掲げた署名活動を展開し、白川博一市長に対して現段階の署名数2550筆を提示した。割石共同代表は署名を机に置き「これが民意だ」とした。この時、白川市長と割石共同代表は約30分にわたり、意見を交わした。白川市長は「要求はすべて事業者に渡してもらいたい。私は署名内容や趣旨をまったく知らない」として、署名に目を通すことは無かった。市と市民団体との温度差は大きな開きがあった。以下に、交わされた意見内容をまとめた。
郷ノ浦町柳田地区で建設計画が進む民間運営「認定こども園」。先月13日、建設計画と施設運営を担う社会福祉法人北串会(雲仙市、中路秀彦理事長)は、同会理事会の判断により事業の延期を決め、開園を来年4月予定から1年延期の2024年4月にすることを発表した。同月22日同会から市に届いた申し入れ書面によれば、延期の理由は「建設請負業者との調整に時間を要したこと、及びウクライナ情勢などによる物価高騰並びに建設資材の入手が困難な状況であることから、2023年3月末までの工事完了が困難であると判断し、同地での開園を1年延期し、2024年4月の開園としたい」というものだった。白川博一市長は先月27日、市議会9月会議の場で延期理由を報告した。同日、市民団体は建設地反対署名2550筆を白川市長に提示した。
署名活動により建設地反対の意を示す
奇しくも白川市長が延期理由を報告した同日、市民団体「壱岐のこどもの健やかな育ちを守る会」は、郷ノ浦庁舎2階の市長室(応接室)に出向き、市民から集めた「建設場所に反対する署名」を白川市長に提示した。
同市民団体の割石共同代表は白川市長に対し「まだ署名活動の途中段階だが、建設場所の反対の意を示す署名が集まっている。市長には民意として目を通してもらいたい」と提示した。白川市長は「どういう内容で署名活動を行なっているのかまったく知らない。署名の趣旨などは何なのか」と説明を求め、割石共同代表は書面に記す内容を読み上げた。同団体による署名の理由は別表のとおりだ。
署名活動の開始からわずか1か月、多くの市民が知ることとなった。しかし、市長をはじめ市の対応は意外なものだった。当紙513号(9月2日発行号)では、署名活動の内容を1面記事で掲載した。さらに、署名数2550人といえば、当市の有権者数1割に相当する数だ。これらは民意の一つとして捉えねばならない。しかし、白川市長は「署名内容や趣旨をまったく知らない」との言葉を市民団体へ突き返した。
苦言にはなるが、このような対応だからこそ、行政に要望を求める市民団体が発足するのではないか。約1年半前、市民団体による市長リコール署名活動が起きたことを、よもや忘れたわけではあるまい。
行政のトップや幹部は、常に市民の声に耳を傾け、動向に目を向けていかねばならない。本当に「知らない」ということで署名に記す内容の読み上げを求めていたのならば「市民目線の行政なのか?」と強く疑問がよぎる。行政トップ側は、常に民意に意識を向けて運営すべきだ。それがたとえ有権者数の1割であってもだ。いずれにせよ、耳を疑うような会話だった。
補助金事業でありながら市長とは1度だけ面会
現在の署名数について、割石共同代表は「まだ署名活動の途中であり、活動を終えた後に改めて提示する」とした。白川市長は「もしも、今後署名を持ってくる場合は、副本の持参を願いたい。原本は当事者ではないので受けることはできない。原本は当事者に渡してもらいたい。
住民説明会の要望は重々承知している。そのことは事業者にも説明するよう伝えている。事業者が多くの市民の意見をどのように受け止めるかはわからないが、市としてはできるだけ納得できるような説明をするようにとしか言えない。その点は理解願いたい」と返答した。
割石共同代表は「補助金が付いてから市長にあいさつに来るなど事業者は市に対して失礼だ」と意見した。同会と市長が初めて面会したのは今年7月だった。しかし、同会は約4年前から本市に足を運び、市こども家庭課担当者とは5回ほど面談している。白川市長は「私もその件に関しては、会いにきてくれても良さそうなものなのにとは思った」と答えた。
11月6日、説明会を予定
北串会による認定こども園に関する説明会が11月6日に予定される。市こども家庭課は「説明会は同会が行うもので、市は立ち会うのみになる」と述べている。
割石共同代表は「8月末に行なったへき地保育所に関する保護者説明会は市が行なっている。11月の説明会で関連事項の質問があった場合は市が答えるのか」と問うた。白川市長は「市に関する内容であれば答弁する。今回の説明会は同会によるもの。万が一、市の保育行政に関することなどであれば、方針の説明はする。しかし、認定こども園の計画に関して市は説明しない。同会が説明する」とした。
割石代表は「しかし、保護者説明会ではへき地保育所は閉所すると説明しているが」の意見に、白川市長は「認定こども園とへき地保育所は別問題。認定こども園ができると、民間の保育園にしわ寄せとなる。公立保育所を閉所せずそのまま残すと、民間保育園の園児が減ることになる。民間保育園の影響を考え、公立保育所の閉所をする。以前は柳田と志原を除くへき地保育所の閉所だったが、民間を圧迫しないという理由で、柳田と志原を含むへき地5園の閉所を決めた。よって認定こども園の説明会と閉所の説明は一緒にはしない」と答えた。
同会が予定している説明会の傍聴参加について、市こども家庭課は「子育て世代の保護者、それに関係している人、その他に孫がいる人なども参加できる」と述べた。
説明会について、市の発表では「事業の延期に至った経緯や開設予定の認定こども園施設概要、安全対策や保育サービスの内容などを説明する」とある。この項目とは別に、現予定地についての意見交換、市民の質問に答えるのかなどはわからない。
割石共同代表は「質疑応答の時間を取るよう、同会に要求するつもりだ。意見も交わさずに事業を進めるなど、言語道断」と厳しい口調で語った。
以下、同団体と市との関連質疑は次のように続いた。
―市有地の活用は考えていないのか
(白川市長)同会が現地で建設をすると決めている。それを市が口出しはできない
―4年前に壱岐のある人が同会理事長に現地を紹介したことから始まったと聞く。同地の提案段階で、市としては他の場所の選定提案はできなかったのか。
(白川市長)当初はもっと広い農地の選定があった。しかし、農林組合の許可が下りなかったと聞く。その点は同会に聞いてもらいたい。
国から補助金の交付決定の内示が4月に届き、法令に基づき市は予算の4分の1(約5700万円)を支出するよう通知がきた。その時初めて知った。市も当初予算では組んでいなかったため、6月の補正予算になった。事業者は本市を通した申請ではなく、県に申請する流れだった。2月に提出した施設整備交付金協議書も、県から申請の要請があり行なった。
危険な地に安全を講じる矛盾
現建設場所について、白川市長は「危険な場所も安全対策を講じれば安全になる。よって安全対策をきちんとする旨を説明するよう事業者には要望している。それが一部の建設地反対意見への対応になる。市としては、そういう指導しかできない」とした。
割石共同代表は「いや、最初から安全な地に計画をすれば、こういう署名活動は起きなかった。危険と言われている場所にする必要はない。島内には安全な場所はいくらでもある。これが署名した多くの市民の意見だ」と述べた。
この会話について前々号の記事を再掲する。「危険な地に安全を講じる、安全な地により安全を講じる。どちらがより安全なのか、言うまでもない」これが当紙の見解であり変わることはない。 今一度、安全安心とは何なのかを考え、子ども達に主眼を置いて考えるべきではなかろうか。