2022.10.05丁寧な説明で事業進行を

 本市が積極的に導入に向け、検討を続けている「市洋上風力発電等導入検討協議会」が26日、壱岐の島ホールで開かれた。本市周辺海域の3か所に洋上風力発電の導入可能性候補エリアを設定するため、今年度中に同エリアを決定する流れだ。

 協議会に先立ち開かれた勉強会で、一般社団法人東京水産振興会の長谷成人理事は「洋上風力と漁業との共生について」と題して講演を行い、漁協関係の理事や組合員、職員など約50人が参加した。

 長谷理事は「洋上風力発電事業は、漁業存続や振興などに結び付けられないかという共生の視点で検討すること。仮に同事業によって一部の漁業者に支障が見込まれる場合も、すぐに諦めたりせず、代替漁場の整備や新規事業への転換など、代償措置で克服できないかなどを検討してみること」と漁業者に提案した。要するに導入の検討には、漁業者に対し漁業影響調査の重要性を解く必要があるということだ。

 協議会では、これまでの経緯と今後の取り組みについて説明があった。本市が積極的に洋上風力発電の導入を進める理由には▽2015年時点でエネルギー代金として約43億円が島外に流出している。その規模は市の総生産の約5・8㌫に及ぶ▽島内2か所の内燃力発電で電力の大半をまかない、本土と電力の連携系統がない。化石燃料の依存度を下げ、電力の地産地消を図ることが二酸化炭素排出量の削減につながり、電力の安定供給とコスト削減になる▽脱炭素社会の実現は海洋環境の改善になる。すなわち、漁業の活性化となる▽同発電にかかる部品製造の一部を本市で生産する。雇用創出や若者の島外流出の歯止めとなり、地域経済の活性化につながる-など。

 メリットばかりに思えるが、デメリットはどうか。本市の場合、農漁業などの一次産業とともに観光産業も重要だ。洋上風力を島の沖合に導入した場合、当然ながら景観保持の問題が出てくる。さらに、海域に生息する鳥類の生態にも影響を及ぼす。同協議会の説明によれば、本市周辺海域にはオオミズナギドリやカンムリウミスズメなど約10種の鳥類が生息しているそうだ。これら、自然動物への影響はどうなのか。

 洋上風力発電に限らず玄海原子力発電など、市や県、関係各所の説明や資料はプラス面ばかりに焦点を当て、マイナス面はなるべく目に付かないようにしている傾向がある。

 行政関係が関わるあらゆる事業が、市民生活や地域の活性化につながるのであれば、堂々とプラスマイナスの両面を提示し、より多くの市民に向けた丁寧な説明をすればよい。洋上風力発電導入が実現となれば大事業だ。説明が下手なばかりに、本来であれば市民にとって良いはずの事業も疑念をもたれ、断念した例は過去にもある。繰り返すが、市には市民に向けた丁寧な説明の場を設けることに期待する。