2022.8.19議会の判断と民意のずれ

 これまで何度も問題点の指摘と追及を重ねてきた郷ノ浦町柳田地区で建設計画が進む「認定こども園」は、疑問を持つに至った一部の市民らが独自に調べを進めている。数年、数十年後の本市を見据え、真剣にこの問題を考えているのだ。

 今回、建設計画に至るまでの経緯と問題点をまとめ1面の記事にした。その中で、市民が疑問を抱えることになった理由もわかってきた。

 1つには、5月30日に開かれた市議会全員協議会(以下、全協)の様子だ。取材を通してわかったことは、市側が示した建設計画にあいまいさがあったことだ。当初、市の説明で同計画は県の判断によるものとし、市は県に追従しただけと誤解を生む発言をしている。しかし、実際は市と事業者が判断し、市が建設申請を県に申し入れたのが事実だ。市は事業者とともに積極的に建設計画を進めていた側になる。

 さらに、全協では市側のあいまいな説明のみならず、部分的虚偽とも思える説明も議会の判断を混乱させている。部分的な虚偽とは、この時、市や市長は「寝耳に水だった」と言い、県から建設計画の予算計上を要請され、急きょ、補正予算を組むに至ったと説明したことだ。しかし、実際に市は今年2月の時点ですべて把握し、自ら県に申し入れをしていた。このように虚偽に近い説明がまかり通っているのだ。県は申請を受けた側であり、まったく市の説明とは真逆だった。

 全協の説明後、翌月の市議会にも影響を残した。市議会本会議で一部の議員は「より詳細な説明がなければ採決できない」と市に説明を求めたが、他議員は「全協ですべて説明はしている。これ以上聞くことはないではないか」として、説明を求めた議員の発言を制止する行動に出た。結果的に十分な審議を経ないまま、早々に審議を終え採決に進むことになった。

 振り返ればこの時の議会が十分な審議をし、想定される問題点や疑問など、市民に見える形で議論していれば、現在のような混乱はなかったはずだ。全協という密室のみで物事を決め、本会議を軽視する。挙げ句の果てには市側に理解ある議員の姿を示し、民意を蔑ろにする。議員は行政の代表ではなく、市民の代表のはず。こんなことだから、疑問を持つ市民は現市政に失望するのだ。