2019.4.16容認できぬ発言に抗議を

 朝日新聞の記事に、前玄海町町長の岸本英雄氏による玄海原発の使用済み核燃料最終処分場や中間貯蔵施設について、本市に関する発言があった。岸本氏は平成18年に町長選に初当選し、3期務めて昨年8月に退任、12年間町長を務めた。岸本氏は現職時代から玄海原発再稼働に積極的だったとされる。

 

 朝日新聞の記事には、「玄海原発2号機廃炉もったいない」の見出しで、廃炉する時期についてあと20年は稼働できるのではないかと持論を述べている。また発電所建て替えについても、「玄海町の安定した地盤にはもう一つ増設するのは当然。5号機までなら大丈夫ではないか」と述べる。発言の意図は、今の技術では大型蓄電ができないことから、風力や太陽光発電では安定した電力を供給できないからだという。これが、昨年まで12年間町長を務めた、玄海原発が建つ地のトップの考えだ。

 新聞社のインタビューで「中間貯蔵施設や最終処分場はどこに造るべきか」の問いに、氏は「使用した燃料を置く場所なので、使ったそばに造るのが本来」とし、「使用済み核燃料を陸上で運ぶのは厳しく、海岸線を考えざるを得ない」という。核廃棄物の最終処分は、一般的には地上奥深くに穴を掘って埋めるか、海外などでは海中深くに沈めるなどしている。地中に埋める場合、玄海町や唐津市は旧産炭地であり、すでに掘っている箇所があるために、さらに数百㍍掘ることはできないようだ。

 

 驚くべき発言はこの後になる。岸本氏は「対馬や壱岐は旧産炭地ではない。対馬はリアス式海岸で港がきちんと作られているから、いい場所ではないかという気がする」と述べる。さらに自身の海外の最終処分場視察経験から、「地層が良くて地殻が良いとなると仕方がない」と考える外国人は最終処分場建設への理解があり、日本人の感覚とは違うという独自の考えを述べている。

 玄海町は言わずと知れた玄海原発の立地にあり、町をあげて原発稼働の賛成を表明する自治体だ。一方で、本市をはじめ周辺自治体は稼働反対を表明している。原発稼働の賛否を言うのは各自治体の考えもあり、とやかくは言わないが、「最終処分場を壱岐や対馬に作ればいい」などの発言は到底容認できるものではない。現職時代に一度でも本市に対して意見交換や意思確認はあったのか。

 

 繰り返すが、本市は市長をはじめ市議会は原発稼働に反対の意思を示す。そのような考えの本市に対し、たとえ退任後であれ一方的な最終処分場建設に対する発言は許されるものではない。当事者を蔑ろにすることは、撤回すべきではないのか。(大野英治)