2019.4.23自殺者減少に向けて取り組み進む

本市の自殺者比率は全国の1・5倍。「いのち支える自殺対策計画」を策定

 

 市は、今月はじめに「いのち支える自殺対策計画」を策定し、市ホームページ上で概要を公開した。国では、平成28年4月に自殺対策基本法が改正され、各自治体に自殺を防ぐための計画策定が義務付けられてのもの。全国的に自殺者は高い水準にあり、本市でも平成24年から28年までに41人(年平均8人)が自殺により命を落としている。国や県の自殺死亡率との比較では、本市は約1・5倍と高く、市全体で対策に取り組まねばならない状況にある(表1)。このようなことから、市は昨年8月に、白川博一市長を本部長とし、市の各部課長とともに「市自殺対策推進本部」を立ち上げ、対策計画をまとめた。

※各表は本紙に記載。

 

 対策計画では、今年度から4年間を計画期間とし数値目標を掲げる。平成28年度の人口10万対での自殺死亡率30人を24人まで減少させるとする。さらに、市国民健康保険特定健診の問診でわかった自殺の要因となる「睡眠が十分にとれていない人の割合」を平成28年時の26・4㌫から24㌫に減少させる方針だ。また、自治体職員の自殺対策研修受講率を70㌫以上とし、専門知識を持つ職員の育成を行っていく。

 市が掲げる重点施策は、「市民一人ひとりの気づきと見守り」「こころの健康づくり推進」「気づきのための人材育成、確保および資質の向上」「社会全体の自殺リスクの低下」「地域ネットワークの強化」など。各課や関係機関の連携と協力のもとに目標計画の取り組みを進めていく。

 また、市民の取り組みとして、周りで悩んでいる人や会合に顔を見せなくなった人などへの「気づき」。身近な人への声かけや話を聞くなどの「傾聴」。悩んでいる人へ相談に行くことを勧める「つなぎ」。地域の皆で声かけを行い、「見守る」などで見守りの輪を構築して広げるとし、地域との連携の重要性を掲げている。

 

 対策計画には、平成24年から28年までの本市における自殺者の分析がある。本市では、この期間に41人(男性32人、女性9人)が命を落とした。平成29年にまとめた「地域自殺実態プロファイル」によれば、自殺者の特徴としては、高齢者のほか、無職者・失業者などの生活困窮者、勤務や経営の悩みなどをあげている。本市を含む県での自殺の原因や動機は、健康問題が最も多く、次いで経済・生活問題、家庭問題があり、近年では勤務問題が増加している(表2)。

 県における自殺者は性・年代別で、平成28年時には男性では50歳代が最も多く、次いで60歳代、40歳代となる。女性では60歳代が最も多く、次いで50歳代、80歳以上となる。19歳以下を除いて、女性に比べ男性が多く、女性の2・7倍にのぼる。本市の状況は、全年代で男性の自殺率が高く、80歳以上の男性自殺率が最も高い(表3)。

 職業別で本市は、「自営業・家族従業者」が60㌫、「被雇用者・勤め人」が40㌫。全国との比較で、自営業・家族従業者の割合が高いことが特徴。理由は、農漁業従事者が多いことが考えられる。また無職等の自殺率は75㌫と有職者の3倍となっている。

 自殺者における自殺未遂歴の有無では、「未遂歴あり」が20㌫、「未遂歴なし」が63㌫で、本市は全国比較とは大差なし。60歳以上の自殺者の同居人有無では、「同居人あり」が83㌫(男性66㌫、女性17㌫)で、全国の約70㌫と比べ割合が高い。

 

 本市での自殺者増加は、数年前から顕著に表れている。今回の取り組みは、国や県の割合よりも高い傾向にある本市自殺者率の低下につながる重要な施策だ。白川市長は対策計画の中で「自殺要因となる諸問題を踏まえ、様々な角度から支援ができるようにする。自殺はデリケートな問題でなかなか表に出にくく、気づきにくいが、市の実情に合わせた対策を総合的、効果的に推進する」とし、「市民全員で連帯感を持ち、生きることの阻害要因を減らし、生きることの促進要因を増やすことで、自殺に追い込まれることのない市を目指す」と述べている。