2022.11.0930㌔圏内から広域避難の矛盾
先月29日、今年度の原子力防災訓練が実施された。本市は島の南部が玄海原子力発電所から30㌔圏内に位置するため、万が一、原発事故が発生した場合は甚大な危機にひんする可能性がある。このことから、本来であれば有事さながらの緊張感ある訓練が必要とされる。しかし、実態はどうだったのか…。
県内では30㌔圏内に位置するのは本市を含め松浦、佐世保、平戸の4市になる。県外では福岡県糸島市と佐賀県唐津市などの一部も含まれるため、合同訓練を行うこととされている。
これら他市と本市の大きな違いは、本市の場合は離島であることだ。これがどういうことかというと、地震や突発的な災害で玄海原発に想定外の事故が発生し、県外など安全な場所への広域避難を行わねばならない場合、他市はバスや自動車を使った避難が可能となる。
本市は離島であるがゆえ、バスや自動車などの交通機関を使った広域避難はできない。約2万5千人の全住民は、ほぼ海路による避難を余儀なくされる。全島民避難にかかる日数は、これまで言われてきた想定では約5日半とされている。
原則として原発事故が発生した直後は屋内退避とし、さらに危険な場合は勝本町など30㌔圏外へ一旦避難する。それでも危険となった時点で全島民は島外避難が判断される。以降の最終判断として広域避難があり、最終避難者までに約1週間を要することになるが、被曝の可能性はないのか。
広域避難については、7月29日に開いた「県原子力安全連絡会」にある。同会は玄海原発の安全対策などの情報共有や意見交換をするため、九電、県危機管理課など原発関連担当者、市からは白川博一市長をはじめ、各組合や団体代表らが出席する会議だ。
県危機管理課は「いったん北部へ避難するが、その後、島外避難が考えられる場合は郷ノ浦港や印通寺港など南部に戻り避難する」として島外避難経路を説明した。
原発事故により30㌔圏内の住民は被曝を避けるため、いったん島の北部に避難するが、さらに事態が悪化し島外への広域避難が発令された場合、再び島の南部に戻り、島外避難せねばならない。要するに島外避難をするためには、放射性物質到達の可能性がある場所へ戻らねばならない。今回の訓練もそのような流れで行われている。同課は「しばらくの間の屋内退避であれば健康面への影響はない」と説明はするが、確かなことなのか。福島の事例はどうだったか、忘れたわけではあるまい。
30㌔圏外へ避難した住民が、再び30㌔圏内、あるいはその近辺に戻って避難するなど他自治体でもあり得るのか。きちんとした根拠あるデータがあるのならば、示してもらいたい。島民の生命と健康に関わる。