2022.11.09高齢者への福祉と支援を考える

命を救う見守りと連携のまちに

 

 「もしも誰かが気が付いて声をかけてれば、こんなことにはならんかったとに。なんで4か月もの間、誰も訪問せんかったとやろ?…」。不幸な出来事を知った地域の住民は、後悔と悔しさをにじませながら語った。先月21日、独居生活の後期高齢者が誰にもみとられず、誰にも気付かれず息を引き取った。発見されたのは死亡後から4か月も経った時だった。なぜこのような不幸な事態が起きたのか。支援体制は機能していたのか。高齢者にとって優しい社会とは何かを考える。

先月末に起きた独居高齢者の死亡を教訓へ

 先月21日、市内の某所で80代後半男性の独居老人が自宅で亡くなっていた姿が発見された。死後約4か月が経過し、遺体はミイラ化していたという。壱岐署の調べでは、男性は5月7日に壱岐病院で受診の記録があり、その後の通院歴は無い。自宅の郵便受けは6月17日以降のものが残されていた。このことから、推定で6月中旬以降に死亡と断定された。その後、誰も男性宅を訪れることなく、先月21日に市包括支援センターの職員が発見し、警察に通報した。

 現場に立ち会った壱岐署は「自宅での独居老人の孤独死は市内でも頻繁に起きている。一般的に事件や事故案件ではないので、警察から公表はしない。しかし、今回のように死後数か月経過して発見されたケースは非常にまれだ。記録にある限り本市ではほとんどない。死後4か月というのはあまりにも長すぎる」と事案を振り返った。

相談することで助かる命はある

 昨年度、市の調べで、本市の65歳以上の一人暮らし高齢者は約1700人。本市の全人口が約2万5千人とすれば約7㌫になる。この割合は決して少ないとは言えない。今後はさらに高齢者率は上がると予想され、それに伴い独居高齢者率も上がることになる。

 市包括支援センター担当職員によれば、死亡した男性は昨年から介護支援を自ら断っていたという。経済的な理由なのかは不明だが、当時、男性は買い物など自立した生活が可能だったこともあり、本人の意思があれば行政は尊重し介入は難しくなる。しかし、担当職員は仮に経済的な理由であったとしても「経済状況を考慮した支援はある」と言い、同様に支援を要する高齢者に対しても「まずは相談をしてもらいたい」と警鐘を鳴らす。

 支援を断った以降も、地域を回るケアマネージャーは定期的な電話連絡で安否を気遣うが、しばらくした後、男性に電話は通じなくなった。心配で訪問するが、玄関は鍵がかかり声かけするが返事はなかった。男性が住む地域のケアマネージャーは、1人で約150人を担当するため、労力の限界もあった。

 市は、郵便局員や保険外交員など市内で事業を営む事業所や団体の協力のもと「市地域安心見守り事業」を行なっている。日常の業務の中で、さりげない見守り活動を行うものだが、ここでも地域の高齢者の見守りは行われている。さらに、地域で問題を抱えている人の相談や指導の活動をする民生委員や公民館員など、周辺住民の見守りもある。

 しかし、これら各支援も当事者である高齢者が向き合ってもらえねば機能しない。今回のケースで言えば、当事者は自立を理由にケアを断り、民生委員やケアマネージャーが訪問するが、玄関は鍵がかかり留守と判断してしまった。悪条件が重なってしまい不運としか言いようがない。しかし、今回の事案を教訓に対応を練らねば、また同じ不運は起きる。

本市は高齢者の島であることの自覚を

 本市は、2020年から24年までの期間、これからのまちづくりの指針となる、第3次壱岐市総合計画を策定し、基本理念を「誰一人取り残さない。 協働のまちづくり」と掲げた。「市民一人ひとりの多様性を理解しつつ、寄り添い、ともに助け合い、つながることを通じて進化を続ける社会を目指す」との理念だ。

 しかし今回、独居高齢者の男性は「社会に寄り添われることなく」「助け合うことなく」「世間や支援などとのつながりもなく」一人寂しくこの世を去った。去ってから4か月もの間、誰からも発見されることなく放置され続けた。本市が掲げる「誰一人取り残さない」の理念は、行政の支援とともに地域の気にかけや見守りなど、官民一体でなければ機能しない。

 市民福祉課担当者も今回の事案に対し「各関係部署の見守りの連携がどうだったのか、検証を進めていかねばならない」と悔しさをにじませた。

 本市は高齢者の島。高齢者が安心して住み良い優しい社会へと向かうため、市民が意識を高めていくきっかけになればと強く思う。「見守り、助け合い、気にかけ」皆が心に留めて行動を起こせば不幸な事態は未然に防げる。たとえお節介だと言われても、命を救うこと以上に大切なものはない。

※遺族への配慮のため、氏名、町名は伏せています。