2023.8.01市民が活用してこその条例

 市は、本市のまちづくりにおいて、最も尊重すべき条例として位置付けられる「市自治基本条例」の検証と見直しのため審議会を開くことを決め、20日に第1回目の会を開いた。2018年の制定以降、実に5年後の検証となる。その間、同条例は果たして市民に周知されていたのか。多くの市民が知る条例であり内容として扱われてきたのか。審議会の結果を前に、当紙としても独自に検証をしてみたい。特に「市民は内容を把握していたのか」に重点を置く。

 同審議会の会長を務めた長崎大学経済学部准教授の山口純哉氏は「自分ら市民の未来を拓くために創り、行政と市民が共有するのが自治基本条例だ」という。まったくもって納得する。その言葉にある行政と市民との間で、同条例の共有はできているのか。もっと根本的な話だが、市民の多くは、同条例があることを知っているのか。一部の市民に聞いてみたが「なにそれ?初めて聞いた」との答えが、比較的高い割合であった。ということは、共有どころかこの5年間、頭の片隅にさえなかった市民が多かったということにならないか。

 どのような条例も、誰も知らなければ機能しない。制定はしたものの、市民が知らなければ無かったことと同義になる。まずは、市民への周知がどうだったか、審議会は基本的なところから検証せねばならないはずだ。

 そして、次は条例内容には何が記載されているのか。よく読めば、市民生活とともに市民の権利などが記載されていることがわかる。さらに、市議会や市長、市職員は市民に対してどのような立ち位置で接しなければならないのかが定められる。

 条例文書の中で、特に印象に残る部分は「行政側から市民への情報提供に努めること」市民には市政の情報を知る権利があることが書かれている。市長や議会は市政についてのことを、わかりやすく市民に伝えねばならないことなどもある。

 これまでの5年間の市政を振り返り、情報提供の条文は機能していたのか。直近で言えば、郷ノ浦町での認定こども園建設計画で、市側は公表すべき情報を出さなかった。隠蔽に近いと言っても過言ではない。結果的に、事業者側へ多大な影響が起きる事態になった。市と市民との信頼関係も揺らいだ。他にも学校改築工事などに関する教育行政など、記憶に残る案件は多い。

 市議会については「民の代表機関であり、市議の責務は市政運営を監視、政策提言を行うもの」などとある。市長は「市政の透明性を高めながら、市民への説明責任を積極的に果たすもの」とある。このどちらも条文に記載され、市民は積極的に要求することができ、それに対して議員や市長は誠意を持って応えねばならない。

 もっとも、市民も「市民一人ひとりが責任を持ち、未来につなぐ活力あるまちづくりの実現を目指していく」という理念を遂行せねばならない。行政も市民もともに市と、市の将来を担う人材を育てる責務がある。

 以上、一部にはなるがこれらのことが同条例に定められている。条例はみなが活用してこそ生きてくるもの。新たな見直しをする審議会は、市の将来を見据えた誠心誠意ある審議を求める。