2023.8.015年目の条例見直し、審議始まる

市民が主役の条例、令和5年度第1回市自治基本条例審議会

 

 市は、来年度以降の「市自治基本条例」の検証・見直しに着手するための審議会を20日、芦辺町の壱岐島開発総合センターで開催した。同条例は、自治や市政を運営していくにあたり基本的な事項や原則について定めるものとして、本市のまちづくりにおいて、最も尊重すべき条例として位置付け、遵守することを定めている。2018年12月に制定、市民を主体としたまちづくりの実現に向けての取り組みを推進した5年後の今年、同条例の規定に基づき、検証と見直しを行う。

 同条例は、「この島に誇りを持ち、それぞれの立場で互いに協力し合い、より良いまちづくりに取り組まなければならない」「子どもたちの健やかな成長に寄与するとともに、生涯を通じて学べる社会の実現を目指すことで『教育のしま壱岐』を更に確立し、壱岐を担う人材を育てていく必要がある」とした上で、「私たち市民が主役であることを示し、自治の基本理念を確立する」とし、市政運営などに関して最も尊重すべき、市民自らが定めた条例だ。

 第1回目開催となる今回は、委員の委託と会長選出、同条例の概要などの説明、今後の検証やスケジュールなどを取り決めた。

 参加した委員は市内各団体や各まちづくり協議会の会長ら27人と、公募により選ばれた市民3人の計30人(うち26人出席)。同審議会会長には長崎大学経済学部准教授の山口純哉氏が選ばれた。山口会長は「現在の社会は、ここ数年で大きく変わった。そのことからも条例の見直しは必要なこと。市民にとって使い勝手が良く、これなら使えるという条例にしたい。市民自らで見直しをしたと思える条例を協議していく」とあいさつした。

 さらに、「市民参画・協働と自治基本条例の必要性」について講演した山口会長は「いかに市民が参画し、自分達でどういう町にしていくか。その最低限のルールが同条例。特に本市は市民参加とせずに参画としている。これはすばらしい考え」と、現制定の同条例の内容を評価した。

 その上で、今後の見直しでは「現社会は人口減少や少子高齢化で地域の文化や祭りなどが維持できない状況にあり、地域に相談相手がいないなどコミュニティ(共同社会)のあり方も変化している。行政依存社会の限界もある。よって、これからは多様な価値観を持つ市民の参画が重要になる」とし、「そのためにも最低限のルールは必要」と同条例の必要性を強調した。

 同審議会は、11月末ごろまで計5回開催を予定。検証結果などを12月までにまとめ上げ、市長に報告する流れだ。その後、同月議会に上程し、議決を経た後の来年1月以降から、市ホームページへの掲載や市民向け講座の開催などをはじめ、市民への周知をする見通しになる。

 同審議会で検証する内容は以下の項目。

【検証の方向性・視点】

・社会情勢の変化に対応した規定となっているか。

・本市にふさわしい自治を推進する内容になっているか。

・条例が活用されているか。

【検証方法】

・同審議会による「制定後の市の取り組み状況確認」「市担当課への意見聴取」

・市役所各課の管理職と関係団体で専門部会を構成。「制定後の取り組み状況と条文などの逐条解説(順を追って)の検証」

・10月末ごろにパブリックコメントの募集。12月上旬に結果を踏まえた検証。

 

主な制定内容(2018年制定の一部から抜粋)

 

【自治の基本原則】

・市民、市議会及び市長等は、まちづくりに関する情報を共有するため、公共の福祉に反しない限り、互いに情報提供に努めること。

・まちづくりの主体は市民であり、市議会及び市長等は市民の自主性を尊重するとともに、その取組を支援すること。

・市民に対して市議会及び市長等は、市政についてわかりやすく説明をすること。

【市民の権利・責務】

・公共の福祉に反しない範囲での市政運営に関する情報を知る権利

・市民は、まちづくりに参画するにあたっては、互いに尊重しながら自らの発言と行動に責任を持つ。

【市議会・議員の責務】

・市議会は、住民の代表機関として、市民福祉の向上及び市政の発展に寄与するため、市政運営を監視するとともに、市政に対し、政策立案又は政策提言を行うものとする。

・議員は、住民の代表機関の一員であることを自覚し、公正かつ誠実に職務を遂行するものとする。

【市長等の責務、市政運営】

・市長は、市民の負託に応え、市の代表者として、指導力を最大限に発揮し、公正かつ誠実に、また、総合的に市政を運営するものとする。

・市長等は、総合計画等の内容及び進捗状況に関する情報を市民にわかりやすく公表するものとする。

・市長等は、行政サービスの低下を招かないよう十分留意し、行財政改革に取り組むものとする。

・市長等は、予算、決算及びその他市の財政に関する情報を市民に分かりやすく公表しなければならない。

・市長等は、施策・事務事業の目的や目標、成果を明らかにし、市政の透明性を高めながら、市民への説明責任を積極的に果たすものとする。

【情報公開】

・市長等は、公正で開かれた市政の推進を図るため、市が保有する情報を別に条例で定めるところにより公開するとともに、市民に積極的に情報提供を行うものとする。

 ・市長等は、市が保有する情報が市民との共有財産であるとの認識に立ち、適切に情報公開及び情報提供ができるよう組織的に管理するものとする。

【自然環境、歴史及び文化の保全等】

・市民、市議会及び市長等は、本市の財産である先人が守り育ててきた素晴らしい自然環境、歴史及び文化を保全し、活用、及び次の世代に引き継がなければならない。