2023.2.28対岸の火事ではない。ともに考える時
隣の島の話題になるが、現在、対馬市では原発から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみの最終処分場建設の是非で揺れている。
地元の話によれば、対馬市議会2月会議で議題に上がり、3月議会以降も議案として上がる話もある。市議の中には、処分場誘致の決議文を用意しているとも言う。ちなみに、同市では2007年に同様の議論が起き、市議会は最終処分場誘致反対を決議した経緯がある。誘致反対をした議会は、約15年後の今、誘致賛成に転じようとしているのだ。現在、対馬市議会は賛成派と反対派に割れようとしている。
直近の経緯を振り返る。まず認識せねばならないのは、全国の核のごみは青森県六ヶ所村の中間貯蔵施設に溜まっているが、国内に最終処理施設はなく、一つの候補地として対馬市があげられたことだ。核のごみ最終処分に関して経済産業省と原子力発電環境整備機構(NUMO)は昨年11月23日、対馬市内で説明会を開いた。この時、どのような説明があり意見が交わされたのかは各社報道にあり、そこから内容を確認してみた。
核ごみの最終処分は、同市の地下300㍍超に埋められ、この深さであれば安全性も高いといわれる。適地となる場所も確認されており、化学的特性マップでの説明もあったようだ。これら説明を受けた参加者からは、安全性と地元産業への影響などから核ごみに対する不安、一方で交付金への期待など意見が上がった。
地元の話では「建設判断の前段階とする文献調査の受け入れで、2年間で約20億円の交付金が自治体に入る。概要調査になれば4年間で約70億円。その段階で反対で手を引けば建設にはならない」として、疲弊する地元経済への起爆剤として歓迎する声がある。しかし、「一旦調査で多額の予算が入った自治体に対し、そう簡単に手のひら返しができるものなのか。調査開始は建設有力候補地となるのではないか」ともいう。そもそも、そのような詐欺に近い行為がまかり通るはずはない。それこそ市長や県知事の責任が問われる事態となる。
本市も対馬市も昨今の経済の疲弊は同様だ。目の前の巨額の予算に意識が向くのもわからないではない。賛成派には「このまま離島の人口減少は続く。20年後、自治体として存続できる人口をどうやって維持するのだ。他に方法があれば代替案を示せ」との意見がある。
反対派は「対馬市には活断層はないため適地だと言う。しかし、未確認の活断層はまだある。建設後、何か重大な問題が起きたらどうする。想定外の影響への不安は大きい。交付金数十億円と比較すること自体がナンセンス」という。ここに、誘致賛否両派の言い分があり、どちらも正論であるだけに問題が難しくなる。
この問題は対馬市だけの話ではない。もっとも近い本市も間接的ではあるが関係する。対馬市の動向に目と耳を傾け、ともに考えていかねばならないのではなかろうか。現在、対馬市在住の有志らによるSNSや動画配信サイトでは、切実な生の声が聞ける。ぜひ、本市民も耳を傾けてみてほしい。
当紙記者としての意見を簡潔に言う。対馬市議会は市民に対し丁寧な説明をし、メリットとデメリットを明確に伝えること。市民の声を「主」、交付金を「従」とせねば一部有力者のみが益することになりかねないこと。そして何が一番、島の将来につながるのかに重点を置く。この問題は決して対岸の火事ではない。当紙もともに考えていきたい。