2021.11.26原発事故の想定対応は現実的か

 毎年11月に県と市、市内各団体代表者らが玄海原発について意見交換する「県原子力安全連絡会」が開催された。回を重ねるごとに思うことがある。出席者が毎回ほぼ同じ顔ぶれのせいなのか、活発な意見が交わされることはない。中には問題点を突く意見もあるが、声を上げるのはいつも同じ人だ。

 数年前になるが、壱岐の島ホールで玄海原発の再稼働に向けた市民説明会があった。その時の市民の発言は実に活発だった。それも当然だ。2011年3月に発生した東日本大震災で、福島第一原発は壊滅的な被害を受け、人類は放射能漏れなど未曾有の事態を目の当たりにしたからだ。根拠なき原発の「安全神話」はこの時に崩壊した。この経験が当時の市民の意見に反映される形となった。

 玄海原発と本市の位置関係で思う。本市の南部は玄海原発から30㌔圏内にあり、しかも周りを海に囲まれた離島だ。万が一、原発事故が発生し、南風に乗って放射能汚染が進んで島外避難をせざるを得ない場合、全島民避難には約5日もかかると試算される。

 これも年に一回の恒例になるが、12月4日、原子力防災訓練を実施する。この訓練事態の必要性は否定しないが、はたして有効なのだろうか。毎年の訓練に参加する市民は一部だが、実際の事故が起きると、約1万4千人が島の北部に避難せねばならない。この訓練は本当に現実的なのか。

 さらに全島民の島外避難の場合、勝本町など島の北部に避難した約2万6千人の市民は、いったん島の南部、いわゆる30㌔圏内に向かわねばならない。勝本港が湾の状況から大型船舶の停泊ができないためだ。県危機管理課は「短時間の被曝のリスクはない」という。一般には長時間の被曝が問題とされるが、原発事故という未曾有の事態で、短時間に全島民島外避難ができる保証はどこにもない。想定外も起こり得るかもしれない。

 自らの生命と健康を守るためには100㌫の安全がなければ納得できない。わずか数㌫の危険は、有事の時に何が起こるのか誰にも予想すらできないからだ。年に一回の意見交換と訓練だが、もっと真剣に向き合うべきではないのか。