2021.12.07市内経済は徐々に回復傾向へ

新型コロナ感染いったん収束、観光客動向や飲食店に回復の兆し

 人々の健康や生命、経済基盤を根底から揺るがしている新型コロナウイルス感染拡大は、国内では第5波のピークだった8月以降から減少していった。第5波は感染力の強いデルタ株だったため、感染拡大の増加が懸念されたが、いったん収束した。このような中、本市では10月29日から、感染防止対策の徹底を条件とした市内飲食店などでの人数制限の取り下げを決定。さらに政府は11月19日、全国の行動制限の緩和を正式発表した。しかし、世界の状況を見れば、欧州各国や韓国などは今も感染者が増え続けているため第6波の予断を許さない。

 

昨年末と比べ、飲食店利用客は回復へ

 市内飲食店では回復の兆しが見え始め、客足が戻りつつある。徐々に宴会などの予約も入ってきているという。店主は「昨年は年末間近に市内で感染確認があり、忘年会や新年会の予約キャンセルや帰省客の来店にも影響した。成人式もこの時期に開催されなかった。今年の年末以降は、少しは期待が持てそうだ」と安堵の表情を見せた。

 

観光客も徐々に回復、修学旅行客も来島

 さらに、観光客の動向にも変化が起きている。市観光連盟によると、修学旅行の来島は「通常であれば30校ほど来島していた。昨年は12校だったが、今年は25校と徐々に例年の数に戻って来ている」と回復に期待を寄せる。フェリーやジェットフォイルの乗船客も11月以降、確実に増えているのは明らかだ。

 一方で市民は「このまま収束してくれればいいが、テレビなどの報道では第6波の予測もある。昨年末に起きた市内感染の二の舞だけは勘弁願いたい」と話し、危機感は拭えない。

 

第5波は収束、しかし第6波の可能性も

 感染第5波は、8月23日が全国で最も新規感染者数や療養利用者が高く、県内で感染者数が多かった長崎市や佐世保市では、8月27日から9月12日まで「まん延防止等重点措置」が取られた。以降は減少傾向となり、新規感染者数の減少や病床の十分な確保があることから、県内全体で10月6日から感染段階をステージ1に引き下げた。

 10月31日から、すべての都道府県において飲食店への営業時間短縮要請などが解除されたことから、本県では11月1日に「県外との往来の際は、移動先の感染状況をウェブサイトなどで確認し、慎重に判断を」「飲食の際は大人数を避け、感染防止対策が徹底されたコロナ対策認証店の利用」「ワクチン接種者を含め、引き続き基本的な感染防止対策の徹底」を県民にお願いした。

 現在(11月30日)、南アフリカで見つかった新たな変異株「オミクロン株」が欧州をはじめ、世界各地で相次いで確認されている。国内でも対策が求められている。

 

本市のコロナ対応の状況とワクチン接種

 本市は、10月6日に市内で計106人目となる新規感染者1人が確認され、市民の間で再び感染拡大の危機感が高まったが、以降は感染者0人が続いている。この状況から、10月29日に開催した「第10回市緊急経済対策会議」で、出席した飲食業や観光事業関連者から「旅館や民宿、飲食店での会食で、人数制限の緩和を検討すべきでは」との意見があった。県は、会食などの人数制限を9人以下とする基準を発表し、市内飲食店などの会食も県に準ずる人数としていた。

 事業者の意見を受け、白川博一市長は「各事業者の感染防止対策の徹底をもって、10月29日付で市内飲食店などでの人数制限を取り下げる」とした。これにより、本市で開催される会食や会合の人数制限は事実上、撤廃された。

 人数制限撤廃の判断は、各事業者の感染防止対策の徹底とともに、ワクチン接種の状況も理由にあった。市民の接種状況は11月24日時点で、接種対象者(12歳以上)2万3057人に対し、1回目の接種者は2万1095人で接種率は91・5㌫。2回目の接種者は2万764人で接種率は90・0㌫。同日の全国の2回接種率が76・9㌫、ほぼ同日の県内2回目接種率は76・81㌫であり、本市の接種率は極めて高いことが分かる。

 政府は11月19日、全国の行動制限の緩和を正式発表した。条件付きで飲食やイベントなどの人数制限をなくす方針も示した。今後感染が再拡大した場合でも、感染対策と日常生活の回復の両立を図るため、ワクチン接種歴やPCR検査などの陰性証明を用いて行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ制度」の適用登録も発表した。

 本市のような離島は、感染者が確認されれば、一気に経済活動は低下する。観光客や島外者向け商品を販売する業種は真っ先に影響を受ける。飲食店などの商店も、限られた市民だけではとても経済は回らない。第6波の危機は消えたわけではない。経済回復策と感染防止策の相反する矛盾は、常に頭の中に持ち続けていかねばならない。