2020.11.10活発な意見がない原発事案

 先月28日、原子力防災対策や安全対策などの情報共有と意見交換を行うため、今年度の原子力安全連絡会が開催された。玄海原子力発電所から30㌖圏内にある佐世保市、松浦市、平戸市、本市の関係4市でそれぞれ年1回、開催している。

 昨年度の同会での意見交換では、出席者から一切の意見が出なかったことへの驚きを思い出す。原子力発電所は、生活に欠かせない電力を作り出す画期的な施設である一方で、核燃料を使用するために施設からの放射能漏れなどが起きた場合、生命に関わる危険とも隣り合わせが常にあるにも関わらずだ。

 県や九電などの関係機関と直接意見を交わす機会も少なく、年に一度しかない同会開催は貴重な時間となるはず。しかも、出席者は本市の代表者として参加している。なおさら、活発な意見が交わされなければならない。そういう意味でも、昨年度のやり取りは残念でしかない、無意味とも思えるものだった。

 今回の会の意見交換では、県や市、九電による避難訓練の課題や原発の現況などの説明を受けた後、数人の出席者から関連事項の発言があった。出席者の意見は、コロナ禍での避難計画の確認や使用済み核燃料の処理についてなど。傍聴席から取材していた立場からは、物足りなさを感じたことは否めない。事故や災害時での危機的状況を想定し、現実に即した質問や意見、離島であるが故の全島民避難のあり方や、避難用船舶の詳細な詰めなどあってもよさそうなものだが。

 島外紙によれば、松浦市で開催された同会出席者からは、「感染拡大の中での避難や避難所の在り方、避難道路の整備を求める質問や要望が相次いだ」とある。具体的には、「社会的距離を確保しながらの避難について、原子力災害と台風などの自然災害が同時に起きた場合、避難先で避難所が不足するのでは、と懸念する声が出た。コロナ禍での避難所の在り方や設置数、運営が現状の計画のままで良いのかシミュレーションが必要との意見もあった」と報道されている。

 万が一、明日、避難をせねばならない事態が起きた場合、適切な対応とスムーズな避難は可能なのか。島民全員の生命は守れると断言できる体制はとれているのか。近年、本市の施策説明でも頻繁に耳にするSDGsの理念の「誰一人取り残すことがない」は、未来に向けた言葉であり、無関係ではない。

 現実に起きるかもしれない事故や災害を、どこか夢物語のように捉えていないだろうか。原発の安全神話は、福島第一原発の事故以降、完全に崩れてしまっていることを理解しているのか。平成23年の東日本大震災から約9年、本市の場合、気の緩みがあるように思えてならない。そもそも、現状の避難方法での全島民避難は約5日もかかる。被曝者ゼロは現実的なのか。(大野英治)