2020.11.10市民の通報を弁護士が受理

市法令違反通報制度で、市民が市政運営を厳しく指摘

 

 市ケーブルテレビ施設通信機器の更新工事として市議会9月会議で、(株)九電工長崎支店への2億7225万円の随意契約を上程した市に対し、「高額な随意契約を行使しようとしたことへの疑念と疑惑は今も解決していない」との理由で、市民から先月26日付で市法令違反通報制度による通報があったことが、当紙の調べでわかった。通報を受けた同制度担当の弁護士事務所は同月28日、通報人に対して「通報を受理し、調査に着手する」と通知した。通報人は「市が議案を撤回しても問題の解決には至っていない。公表された文書は、いかなる場合も責任が生じる」と指摘している。

 

 今回、市民からあった通報は、9月10日に開会した市議会9月会議で、市が2億7225万円の随意契約の議案上程に対するもの。小中学校の児童生徒にひとり1台のタブレット端末を配備する国の「GIGAスクール構想」に沿い、高速大容量の通信ネットワークを構築するための施設更新工事費になる。

 議案を受けた市議会は、多額の工事費の随意契約について「なぜ、入札をせずに随意契約にしたのか。市ケーブルテレビ指定管理者の光ネットワーク(株)壱岐支店の関連会社の九電工が随意契約で請け負うことが慣例となれば、入札そのものが必要なくなるではないか」などの意見が上がり、議会は紛糾した。市は「指定管理者以外に施工させた場合、設定や運用、保守面に支障が生じる恐れがある。また、新旧システムに切り替える作業時間の短縮や、責任分界点の省略などで施工の遅延防止にもなる」と説明している。

 議案上程から6日後の同議会で、市は「契約内容を精査する必要があるため」との理由で突如、議案の撤回を示した。その後、市からの議会や市民への詳細な理由説明がないまま、市議会9月会議は閉会した。

 

市法令違反等通報制度とは

 同制度は2017(平成29)年8月に施行され、9月に市ホームページで制度を設けたことを公表し開始した。市職員などが法令違反をしているおそれがある場合、職員や市民が市に対して書面を通じて担当弁護士に直接通報ができる制度だ。弁護士が通報内容を精査した後に受理となった場合、通報があった行為や事実について、必要に応じて調査や是正措置を行う。通報者の個人情報などは保護される。

 通報の対象として、「市職員などが法令に違反する行為やおそれのある事実があった場合」「個人の生命や健康、財産もしくは生活環境などを害し、これらに対して重大な影響を与えるおそれがある行為」など。同制度を定めることにより、市職員の職務の遂行の公平さに対する市民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、公務に対しての信頼を確保する目的がある。

 

市民が通報した指摘内容を、弁護士は受理と判断

 通報人は、「市と企画振興部は、同工事を入札せずに随意契約での締結を議会に求めた。少額の契約での競争入札は事務量が増大し、効率的な行政運営を阻害することから、契約の種類に応じた一定の金額以内のものについては随意契約によることができるとされる」とし、一般競争入札で契約すべきと意見している。

 地方自治法の施行令で定めている随意契約の基準は30万円から130万円とされ、本市の場合も市財務規則83条に同額を制定している。また、市は「随意契約に関しての見積もりは九電工以外の3社」と説明したことから、通報者は見積もり業者名を記した情報公開請求を市に申し入れたが、届いた見積もり書は業者名部分が黒塗りされたものだったという。

 また、「今回のような高額な随意契約は、取引上の地位が相手方(九電工)に優越していることを利用し、正常な商慣習に照らし不公正な取引方法だ」と指摘する。運営は、九電工の子会社であり市ケーブルテレビ指定管理者の光ネットワークが行い、設備工事を親会社がすべて随意契約で行えば、公正な取引に反し、市財務規則に反する行為とも指摘している。

 さらに通報人は、「一般常識を逸脱する高額な随意契約を上程した行為は看過できない。市職員倫理規定には『職務の遂行の公平さに対する市民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、公務に対する信頼を確保することを目的とする』とある。今回の件を見て不信感が募る」という。

 通報人は、9月25日付で市に対して意見を求める書簡を提出している。企画振興部からの同月30日付の回答は「法令に従った契約手続きであったと判断する」としている。

 この回答に不満を抱いた通報人は、「このような回答の思考で、担当課職員が高額な随意契約を行使したことにより深く疑念と疑惑が高まった。市職員倫理規定にも反する行為」と判断し、市法令違反通報制度で弁護士へ意見書を提出し、受理に至っている。

 今後は、これまでの市の説明などが施行令や市職員倫理規定に反するものなのか、担当弁護士による調査が始まる。