2018.10.10本市は1社入札でも適用とするが…

 またしても本市で入札に関する疑義が起きた。今回の案件は一支国博物館の空調設備修繕工事に関する、指名競争入札について。1社のみの参加で入札執行が行われ、その1社が落札し契約を進めた。

 記憶を遡れば、平成28年1月に入札執行が行われた市内小学校と中学校の消防用設備改修工事等でも、入札に関する疑義が起きている。

 当時の消防用設備改修工事は、入札に先立って前年度保守点検業者1社に参考見積もりを依頼し、その見積もりを元に5社が入札を執行。落札したのは参考見積もりを依頼された業者で、他4業社は最低制限価格を下回ることで失格となった。結果に疑問を感じた4業社は市に対して異議申し立てをし、調査を願い出た。

 市議会では百条委員会での調査もあがったが、総務文教厚生常任委員会が審査をすることとなった。委員会は「入札窓口の一本化、工事費と修繕費のライン引きの明確化、チェックや決済のシステム構築、庁内で作成困難な工事設計書の外部委託」などを市長に提言した。

 そして今回、博物館の空調設備修繕工事の入札において、指名競争入札でありながら1社入札で執行し落札契約まで進めた経緯が問題となっている。国の会計法で定めている入札には、一般競争入札と指名競争入札があるが、どちらも1社入札の弊害が指摘され、全国各地で問題視されている。それは競争性が確保されない理由による。

 一般競争入札は不特定多数の業者が参加可能で、指名競争入札はあらかじめ発注者側(官公庁の契約実務担当者)が選んだ会社を指名して入札する。指名競争入札は談合や業者との癒着などの危険性が常にあり、あまり薦められない入札方式ともいわれる。

 一般競争入札で1社入札が有効かどうかは、会計法令でも具体的な規定はない。しかし入札公告で公募し、結果的に1社のみの入札でも公告を掲載した時点で入札参加機会を開示しているので競争性は確保されたとみなされる。つまり一般競争入札での1社入札は有効との考えが一般的だ。

 今回のような指名競争入札の場合は、発注者側(市)は入札公告を公開しない。市が事前に恣意的に選ぶ業者に通知され入札に参加する。しかし通知された12社のうち1社のみの入札参加となれば、発注者側(市)の指名基準に問題ありと通常は考える。発注者は参加可能な業者を選定する責任があるからだ。

 専門家は「指名競争入札の開催通知を複数社に送ったにも関わらず、結果的に1社入札であれば、指名方法に明らかに問題があり不適切な入札で無効と考えるのが正しい判断」と言う。また「指名競争入札での1社入札は、問題があるので取り止めとし、指名競争入札を最初からやり直すか、あるいは一般競争入札に切り替えるなどの手続きが必要」とも話した。

 問題視されている今回の1社入札について、決算特別委員会の場で白川市長は「1社であっても瑕疵がなければ合法(認める)」と結論付けた。これに対し音嶋議員は「一般競争入札であろうが、指名競争入札であろうが壱岐市は今後も1社入札が可能になるのか」と疑問を投げかける。

 世間の常識では、指名競争入札の1社入札は問題ありとして認められない。しかし本市は今後1社入札でも可能となることを市長自ら明言した。壱岐はガラパゴス化(孤立した環境でエリア外との互換性を失い孤立して取り残されるなどの意味)するのではないか。市長の1社入札容認は、今後の入札に影響しないか心配になる。(大野英治)