2023.4.10離島留学生死亡の検証せず(総合教育会議)
外部評価の第三者委員会設置案など。いきっこ留学制度の抜本的改善案見えず
市は先月30日、いきっこ留学制度について話し合う「令和4年度第2回総合教育会議」を壱岐の島ホールで開催した。1月末以降、留学生や里親をサポートする担当職員が不在だったことが明かされ、白川博一市長は「すぐに2人採用の募集指示をした」と対応をみせた。同制度については「若干の改善点はあるが、比較的満足している」と一定の評価をする一方、「自己評価ではなく、外部からの検証は必要。第三者委員会を立ち上げる」などを提案したが、抜本的な改善案は示さなかった。
いきっこ留学制度を中学生の時から活用していた壱岐高2年の椎名隼都さんが先月1日から行方不明になり、同月20日に遺体となって発見されたことから、緊急会議を開いた。白川博一市長を議長とし、久保田良和教育長、横山秀敏教育長職務代理者、上川久美子教育委員、橋川浩二教育委員、坂元正博教育委員の6人で構成する。
会の冒頭、白川市長は「今後の連携強化と、切れ目ない同制度へのサポートをするための会だ。本市での生活を望むこれからの留学生のため、環境の整備と確認が必要」と会議の趣旨を述べた。
これまで市は、里親留学生と里親への相談や対応の窓口サポートとして、地域おこし協力隊1人をコーディネーターとして配属していたが、1月に任期満了により退職。以降、担当者は不在のまま新たな募集はなかった。この状況に対して市教育委員会は「早急に新たな担当者を配属する」との考えを示した。不在期間は市教委職員が対応していた。
この状況に白川市長は「すぐに募集の指示を出した。今回からは2人募集する」とし、早急な対応の意思をみせた。さらに「同制度は若干の改善点はあるが、比較的満足していると思う。しかし、これは自己評価だ。外部からの検証は必要と考え、専門職のほか、幅広い話し合いのため公募による委員選定の第三者委員会を立ち上げる」と考えを述べた。
椎名さんの死亡を受けて、久保田良和教育長は「留学生の受け入れへの支援体制の強化が必要。これまでどうだったのかの検証を行う。市担当者や学校、里親宅などを見てもらうよう、留学を希望する家族には事前見学を勧めている。その後、市教委では審査を行うが、この体制にも不備がないか見直しをしている。今後も制度を充実させるため、見直しは継続する」と述べた。
さらに「留学生は2か月に一度は実親に会うなど、親子の関係を保てるように、今後は同制度の義務としたい。毎月一度は留学生と里親に面会で直接話を聞き、間接的にも書面での聞き取りが必要」などを提案した。
各委員の主な意見は次の通り。
▽横山教育長職務代理者「学校支援のあり方の工夫が必要。校内の対応と情報共有を密に。市教委主催で同制度担当者の研修や連絡会の開催。サポート職員の増員で、問題点の可視化を」
▽上川教育委員「留学生受け入れ時に親子別々の面談で、留学生の本音を聞くこと。また、長期休暇時は必ず実親の元に帰省させること」
▽橋川教育委員「専門的知識者の助言として、里親を対象とした講習会を開く。里親と実親の交流会開催」
▽坂元教育委員「市教委担当者の増員。里親、実親、留学生と個別に面談し、直接本人の意見を聞くように」
【記者の見解】どうにもしっくりこない。子ども一人が亡くなった事案に対して、この程度の改善案と話し合いでいいのか。危機感がない。
わずか1時間ほどの会議でわかったことは「今年度は昨年度以上となる46人の留学生とする」「いきっこ留学制度に満足している」「これからも同制度の良さを充実させるため、見直しをしていく」「自己評価ではなく、外部評価のための第三者委員会を設置する」「2月から担当者は不在。今後は担当職員2人を配置する」が主な内容であり提案事項だ。
問題は他にも多々あるのではないか。例えば、少ない里親に対して受け入れ体制の限度を超えた留学生募集数や、本市の人口増が目的とも思える制度への肩入れなど。そして、留学生に対してきちんとしたケアができなかった反省点と改善、あるいは制度自体を続けていくべきか否か。こんな緩い対応で終えるのならば、緊急会議の必要性などない。