2022.4.25本市周辺海域にも活断層が点在

政府の地震調査委員会が日本海南西部の海域活断層を公表

 

 政府の地震調査委員会が先月25日、日本海南西部にあたる鳥取県沖から長崎県北方沖にある、これまでに知られていなかった海域活断層の存在を明らかにした。今回初めて存在が認知された断層などから、同委員会は今後30年間の長期評価をまとめ、マグニチュード(M)7・0以上の地震が30年以内に起きる確率を示した。日本海南西部にある海域活断層で、M7・0以上の地震発生確率は8~13㌫。このうち本市周辺海域の活断層では、同程度以上の地震発生確率は1~3㌫と結論付けた。

 

 同委員会は先月25日、日本海南西部の海域活断層の長期評価第一版をまとめた。評価対象海域に分布する活断層のうち、社会的、経済的に大きな影響を与えるおそれのあるマグニチュード(M)7・0程度以上の地震を発生させる可能性がある長さ20㌔以上の活断層を主な対象として、海域活断層の長期評価を行った。同時に断層長さが20㌔未満の活断層についても、位置と長さについて評価した。

 本市の周辺海域を含む九州北方沖・九州北西沖は、「沿岸の海域で北西―南東走向の左横ずれ断層が発達し、沖合で北東―南西から北北東―南南西走向の右横ずれ断層が発達する。西部区域に分布する活断層の活動度は評価対象海域の中で相対的に最も低い。

 地震活動は相対的に最も活発だが、その活動は2005年3月20日に発生した福岡県西方沖の地震(M7・0、深さ約10㌔、最大震度6弱)の震源域や対馬北方沖に集中する。過去に大きな被害を伴った地震も発生しており、その頻度は他の区域と比べて多い」と同海域の特徴をまとめた。

 海域活断層の特性と地震の長期評価では「福岡県西方沖の地震では多くの被害が生じた。過去400年間でこの地震以外に本区域で発生したM7・0以上の被害地震は、1700年4月13日(元禄13年)の対馬東水道の地震(M7・0程度)が知られている(別枠で詳細)。

 本区域内を震源として、今後30年以内にM7・0以上の地震が発生する確率を計算すると1~3㌫」を結論とした。この確立について専門家は「高くはないが低いものでもない」という。

 しかし、「本区域で発生し得る最大級の地震は第1五島堆断層帯の全区間が同時に活動する場合であり、M7・9もしくはそれ以上の地震が発生する可能性がある」とし、さらに「西山断層帯の全区間が同時に活動した場合は、M7・9~8・2程度の地震が発生する可能性がある」とした。

 

M7・0程度の地震は過去2回発生

 2016年に震度7を観測した熊本地震や、今年に入ってからは全国各地で震度4以上の地震が観測、1月には九州東部で震度5強、3月には東北地方で震度6強を観測する地震が頻発するなど、国内の地震頻度は高まっている。現在の状況は、国内の至るところで、いつどこであっても同規模の地震が発生してもおかしくはないとする専門家の見方もある。

 政府は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の経験から、同年6月に全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するため、地震防災対策特別措置法を議員立法によって制定した。地震調査研究推進本部にある地震調査委員会は、地震に関する調査研究の成果を社会に伝え、一元的に推進するために同法に基づき総理府に設置された政府特別機関として設立された。

 本市周辺海域では、警固断層帯北西部の活動に端を発する2005年3月の福岡県西方沖の地震が記憶に新しい。M7・0、震度6弱を観測したこの地震で死者1人、負傷者1204人、家屋全壊133棟、道路崩壊や岸壁陥没等の被害が生じた。また、同年4月20日の最大余震では、志賀島付近の深さ約15㌔で発生したM5・8(最大震度5強)の地震が発生した。

 今年に入り、全国での地震発生率が上昇していることから、さらなる調査結果とともに、本市周辺での地震が発生する可能性も考えながら防災に備えたい。

 

壱岐にも被害を及ぼした1700年(元禄13年)、M7・0の地震

 1700年4月13日(元禄13年)に、壱岐・対馬で有感となる群発的地震活動が発生した。同月15日の朝には、対馬や壱岐、平戸、朝鮮半島南部などで被害を生じさせた大地震が発生、震源の詳細は不明とされる。現在の研究者は「対馬東水道断層付近を震源域とするM7・0程度の地震であった」と推定している。

 この地震の2日前から壱岐や福岡で数回有感地震があったとする記録があるが、この地震の前震活動であったかは不明。その後も壱岐では18日までに多数の有感記録が史料に残されている。また、朝鮮半島でも有感地震であったことが記録されている。この一連の活動で、対馬では厳原だけで藩邸や寺社等の石垣が計2㌔余も崩れ、壱岐では石垣や家潰89棟などの被害が生じたことが判っている。また佐賀や平戸でも瓦が落ちるなどの被害が記録されている。