2020.9.22工事費2億7225万円を入札せず随意契約として議案上程
「行政による入札制度の否定」と紛糾
市は10日から開会した市議会定例会9月会議で、市ケーブルテレビ施設通信機器の更新工事として、2億7225万円の契約金額を上程した。国が推進する「GIGAスクール構想」に向けて早期の設備構築に向けたものだが、多額の工事費に対して市議会は「なぜ入札をせずに随意契約にしているのか」と問うた。契約先は(株)九電工長崎支店で、市ケーブルテレビ指定管理者の光ネットワーク(株)の関連会社になる。市は議案上程日に即時採決を求め、随意契約に積極的な姿勢を見せた。これに対して議会は反発、採決は先送りとなり常任委員会への付託とした。
随意契約の理由と根拠に納得せず
市は、国が推進する「GIGAスクール構想」に沿い、学習活動で積極的にICT(通信技術を活用したコミュニケーション)を活用するため、小中学校の児童生徒に1人1台のタブレット端末を配備し、高速大容量の通信ネットワークの整備を急いでいる。
このため、市議会9月会議初日の10日、市は「市ケーブルテレビ施設通信機器更新工事請負契約の締結」の議案を上程し、当日の審議を経て2億7225万円もの高額な契約金額の即日採決を求めた。しかし、今年4月から新たに市ケーブルテレビの管理者となった光ネットワーク(株)壱岐支店(本社・熊本県)の出資会社である(株)九電工長崎支店(長崎市)へ、入札をせずに随意契約での締結を求めたため、議会は市に対して理由と根拠を求めた。
企画振興部長は「指定管理者以外に施工させた場合、設定や運用、保守面に支障が生じる恐れがある。また、新旧システムに切り替える作業時間の短縮や、責任分界点の省略などで施工の遅延防止にもなる」と説明した。
この説明に対して、議会は「全く随意契約する理由の説明になっていない」として反発の姿勢を示した。また、市は工事概要で、「通信機器の更新センターレイヤー3スイッチ1台、二次集約スイッチ3台、サーバー2台」を示したが、植村圭司議員は「具体的な機器説明がない」と意見し、「これで採決を求める市の姿勢にも疑問だ」と憤った。
入札をせずに契約をする整合性がない
議会は、議案が上程された当日に採決を求めた市の姿勢を指摘した。音嶋正吾議員は上程議案の説明が不足しているとして「高額の契約を随意契約で可能であるという根拠を示してもらいたい」と意見を求めた。
企画振興部長は「本契約は、地方自治法施行令第167条の2、第2項の規定を適用している。これには『不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき』と随意契約が可能とされている」と述べた。
しかし、音嶋議員は「市財務規則の第83条87項との整合性はどうなのか。地方自治法によれば、随意契約ができるのは、少額の契約の場合、入札不適な場合、緊急の場合、契約変更の場合。この要項に則る以外に随時契約できるという整合性の結論を見いだすに至らない」として理解を示さなかった。
また、音嶋議員は「これだけの高額な契約を随意契約でするというのは前代未聞だ。特定の機器購入は他の業者でも納入できる。なぜ、この九電工に特定して随意契約をする必要があるのか。入札による競争の原理が発生しないではないか」とした。さらに、機器購入に至る見積もり業者先についても問い、企画振興部長は「九電工以外の3社になる」とした。
音嶋議員は続けて「市長に聞きたい。これだけ高額な契約を随意契約していいのか。理解に苦しむ。部長は地方自治法施行令の中の条文を適用したと言う。しかし、こういう契約執行は許しがたい。契約は市長の判断でもある」と見解を求めた。白川博一市長は「私が契約担当者だが、内容については指名審査委員会の副市長にある。市の入札ガイドラインを含めて根拠を副市長に答弁させる」とした。眞鍋陽晃副市長は「地方自治法に該当するとして指名委員会で決定している」とし、企画振興部長と同じ説明を繰り返した。
議会は「即日採決はしない」と強気の姿勢
町田正一議員は「わかりやすく言えば、運営を受け持つ指定管理者の関連会社の九電工が設備をやるということだ。指定管理者の関連会社が運営しているのだから、機器設備を優先的にするのは当然と思うが、それを言い出したら大変なことだ」と、今回の随意契約に危機感を強めた。
町田議員は、「運営面は子会社が入札した。設備は親会社が全て随意契約でやるとなれば、これが慣例化したら財務規則の面からも問題がある」と考えを述べ、「そもそも市は、指定管理者選定入札の段階から、こういうケースもあり得るという認識はもっていたのか」と問うた。企画振興部長は「指定管理者制度と設備工事は別物と考えている。今回の工事は随意契約が適当と判断している」とした。
また、町田議員は「市ケーブルテレビは九電工の子会社が運営している。建前上は運営面と設備工事は別というが、当然、指定管理者の運営が決まった時点でわかっていたことだ。市は事前に施設工事について、指定管理者に聞いて当たり前だと思っている。だが、もしそれを聞いて随意契約したとなれば問題だ」と、さらに問い詰めた。
工事の見積もりについても、「九電工以外3社で見積もりを取ったのならば、なぜ入札をしなかったのか。理由が全くわからない。これは入札制度の否定だ。市の説明のように、親会社の設備が使い慣れているから決めたと、こんなことがまかり通ってしまえば行政として全く失格だ。なぜ入札しなかったのか明確な答弁を」と問うた。しかし、企画振興部長は「指定管理者が施行することによって、新旧システムの切り替え作業の時間短縮、システム整合性の確保、責任分配権の省略、事業の継続性などが理由」と、これまでの答弁を繰り返すのみに終始した。
町田議員は「このような理由を言い出したら、運営面と設備面は全く別と言いながら、設備に関しては運営の設備会社がやったらスムーズであり、責任も持てる理由だけで契約になる。しかし、それが行政の入札に許されるのかと言うことだ。それをやり出したら他事業も全て、運営会社(指定管理者)が関連会社へ随意契約でやれるということになる。これを認めてしまえば悪しき前例になる」とした。
さらに町田議員は、「市は今回、なぜ入札しなかったのか。きちんと入札をしていれば何ら問題はなかった。市の説明では随意契約にしなければならない理由にはならない。そう言う論理がまかり通るのであれば、入札制度そのものが必要ないではないか」と強く批判した。
小金丸益明議員は「本日上程し、本日採択するのではなく、委員会付託にすべきだ」とし、豊坂敏文議長は意見を受けた上で委員会付託とすると判断を下し、即日採択は見送られた。