2022.12.13認定子ども園、県議会に県の指導監督を要望

市民団体は市民の声を代弁、県議会議長「思いはわかる」

 

 今月から建設が始まる予定の郷ノ浦町の認定こども園建設計画について、市民団体「壱岐のこどもの健やかな育ちを守る会」(山内裕司、割石賢明共同代表)は1日、長崎県議会(長崎市)で中島廣義議長に対し「認定こども園の建設場所に反対する住民の声を無視した計画実行に対する県の指導監督について」の要望書を手渡した。割石共同代表は「住民説明がないまま公金投入の事業に、市民は怒りを感じている。県から指導と助言を願いたい」と伝えた。中島議長は「県の関与は難しいが、思いはわかった」と答えた。

 

 要望は「県を通じて九州厚生局に認定こども園の計画変更を壱岐市役所が行い、より安全・安心な立地場所の変更と国の交付金の有効活用を実現すること。そのうえで、これから壱岐に生まれてくる子どもたちをはじめ、壱岐市民のために国の交付金の有効活用を実現すること」を市と同園事業者の社会福祉法人北串会(雲仙市)に対して、県から指導と助言を求めた。

 また、補助金適正化法の趣旨に反し、認定こども園事業者選定の公募を行わないまま省略し、特定法人(北串会)のみを対象とした補助金の交付を決定したことなどを問題視していることを伝えた。さらに、要望書には「特定の利害関係者に依存しない、住民自治を基本とした保育行政が行われることも、合わせて是正されること」などが示された。

 建設予定地が土砂災害特別警戒区域隣接や、交通量の多さから事故の危険が伴う可能性にも言及し、「本来ならば、安全な公有地の有償提供をはじめ、保育行政を司る市政が、事業者に対して監督・指導・助言を行い、子ども達の安全を第一に守る責務があるはずだが、何もしていない」と市に対しての批判と疑問を呈した。

 要望書を受け取った中島議長は「法律上、建設が認められない土地ではないと聞いている。事業者も対応すると聞いている。県が関与することは難しい。しかし、壱岐市民の思いは受け止める」と答えた。

 市民団体は「認定こども園を作る計画では、地元壱岐市の事業者には声をかけず、雲仙市の事業者のみの声かけで決めた。壱岐市はそれを県が決めたと言っている。しかし、県は壱岐市から話が来て計画が始まったという。その場所が災害などの危険地だった」などの経緯を説明。このことから「県はもう少し精査して国に上げるべきだった。県議会でしっかりと政治主導で解明せねばならないのではないか」と付け加えた。

 

「同園参入には不適切性がある」と指摘

 記者クラブでの会見には、割石共同代表とともに、市民団体事務局の武原由里子市議会議員、日本維新の会長崎県総支部の山田ひろし幹事長も同席した。

 山田幹事長は「この問題は、同市民団体が署名活動を始めたころより割石共同代表から話を聞いていた。市と県の意思の疎通に不備があり、行政間のやり取りに不明点がある。問題の解明には、県議会も取り組まねばならないと強く思う」とし、同市民団体への協力の考えがあることを明かした。

 割石共同代表は「同園建設予定地は、市民の多くが危険な場所と認識しているにもかかわらず、同地での建設が進められようとしている。同市民団体は、同園の事業に対し再三、建設地の変更を求めてきた。しかし、事業を進める北串会との意見交換の機会もなく、変更する意思も見えない。このことから同市民団体は建設地反対の署名活動を開始し、現在3017人の賛同を得た」とし、署名簿を掲げた。

 武原市議は「市民の中には、危険な土地に子どもは預けられないなどの声がある。市も事業者も『安全に建てます、大丈夫です』の一点張りで、住民説明会を開くなどの機会を設けていない」と述べた。さらに「北串会による認定こども園参入には不適切性がある」と5つの項目を挙げた。

 項目は下記に記載。

 

市民団体が指摘する同園参入の不適切性

①公金を使うにもかかわらず、民間参入の手続き(公募)がなされていない。

②建設予定地周辺の住民説明会もしないまま、12月着工する計画。

③昨年度の国の補正予算に合わせるため、慌てて6月補正予算で壱岐市議会が可決したにもかかわらず、突如事業を延期。議会や子ども子育て会議での説明責任を果たしていない。

④建設計画に反対する3017筆の署名を、法人だけでなく市や県も重く受け止め、専門家の意見を聞くため、現地調査などを実施する必要がある。

⑤子供を安心して育てることができる体制の整備を促進することを目的とする、認定こども園施設整備交付金要綱に反する。