2022.10.25空港滑走路延長案、今回も難色

市長が県に10項目の要望案、大石知事と初の面談

 白川博一市長と豊坂敏文市議会議長、鵜瀬和博県議会議員は12日、長崎市の県庁を訪れ、壱岐空港滑走路延長や洋上風力発電などの再生可能エネルギー導入促進、磯焼け対策への支援拡充など、10項目の要望案を記した要望書を大石賢吾知事に手渡した。空港滑走路案について、大石知事は「空港整備には莫大な費用が必要で国の支援が不可欠。しかし、国の採択条件が見込めるのか、非常に難しい状況ではないかと考える」と、前知事と同様に難色を示した。

空港滑走路延長案、中村前知事に続き大石知事も難色

 2016年度から継続して要望を続けている壱岐空港の整備、空港滑走路延長について要望した。現空港の滑走路長1200㍍に対して、あらゆる機種が離発着可能となる滑走路長1500㍍案を再び掲げた。

 同空港の発着機は、製造中止となったダッシュエイトQ200型機の後継機として今年度から48座席のATR42型機2機を順次導入し、来年度の夏ごろからの運航開始に向けて準備が進められている。しかし、白川市長は「将来の空路の維持と地域振興のため、どの機種でも離発着できる滑走路が必要。本市民間会議でも、航空路の維持、存続及び地域振興のため全力で取り組んでいくことを決意している」として、滑走路長1500㍍案を強調した。そのため、県に対して、滑走路延長など空港整備に向けた調査費予算の確保を要望した。

 要望を受けた大石知事は「どの要望も重要な内容だ。離島振興のためには連携を図っていかねばならない」と前置きしたうえで、「白川市長も重々承知しているとは思うが、空港整備には莫大な費用が必要となる。そのためには国の支援が不可欠。国が定めたその採択条件があり、滑走路延長が必要となるような就航が見込めるのかというのが現時点の条件になる。就航の見込みという観点から、非常に難しい状況ではないかと考える」と厳しい回答を示した。

 しかし、「滑走路延長が必要なのか、定期航路として就航の可能性があるのか、県としては注視していく。そのため、今後も市と県で情報共有をお願いしたい」と付け加えた。

 空港滑走路案については、中村法道前知事と2018年に交わされた要望で「どの機種に限らず延長するという時代ではない。必要性の検証と、費用対効果を徹底的に分析せねば相当額の予算になる」と厳しい回答。2019年の要望にも「空港整備は巨額の費用がかかる。国の支援も必要不可欠だ。国が定めた採択条件である具体的な就航の見込みが必要になってくる。壱岐市では過去に用地確保が困難であったこともある。現時点での調査費も確保することは非常に難しい」と難色を示していた。

 前知事と同様に大石知事も、巨額の費用と費用対効果を示されなければ、実現は難しいとの考えを述べた。

 

洋上風力発電導入事業は地元の理解促進が最優先

 2020年から要望している再生可能エネルギーの導入促進の支援にある本市周辺海域での洋上風力発電導入に向けた協力と支援を要望した。再生可能エネルギー活用について、本市は2019年から水素による実用化実証事業や公共施設での太陽光発電設備導入に取り組み、市の施設への設備導入を目指している。

 洋上風力発電導入事業について、白川市長は「再生可能エネルギー導入の一丁目一番地と位置付けている」とし、市を挙げての事業であることを強調した。

 白川市長は「昨年度から導入に向けた検討協議会で関係者などの意見交換や理解促進を図り、漁業者をはじめとする先行利用者や地域住民との合意形成に取り組んでいる」と現状を説明した。

 今後の取り組みについて「実証事業が実施される場合の海域利用にかかる手続きなど、迅速かつ明確なご指導ご提言を賜り、県内の漁業関係者への理解促進、協力と支援をお願いしたい」と要望した。

 大石知事は「要件を総合的に判断して国へ情報提供を行っている。本県はこれまで促進区域に指定された五島市沖や西海市の江島がある。江島は、西海市が関係者の理解を得ながら導入の実現に向けて取り組み、県も支援した。県としては、地元の調整は、地元自治体で行っていただくという考えだ。まずは市で関係者の調整をお願いしたい」とし、地元の理解促進が最優先との考えを示した。

 

磯焼け対策、支援の有効活用を

 磯焼け対策に関する支援拡充の要望は2019年から始まった。本市周辺海域は、近年の温暖化による高水温の影響や植食性動物の食害、台風などによる藻場の破壊により磯焼け問題が進み、水産業への影響が深刻となっている。

 本市では、イスズミ捕獲に関する助成制度を2019年度に創設、翌年度から海藻の増養殖対策として仕切り網などへの助成を実施するなど対策を進めている。また、市内5漁協・県・市で母藻を漁協間で融通するなどを可能にする「壱岐海域における母藻供給ネットワーク構築に向けた連携協定」を締結するとともに、「市磯焼け対策協議会」を設立、磯焼け対策への積極的な取り組みなどを説明した。

 白川市長は、植食性動物の駆除に関する支援の拡充とともに、核藻場を形成するための大規模な仕切り網による藻場造成を要望した。

 大石知事は「県では食害生物の駆除から処分までの取り組みを支援している。引き続き当該事業の活用を願いたい。また、駆除した魚の有効活用の取り組みも支援している。藻場の造成も積極的に推進しており、地元の意見を聞きながら適切な方法を検討していきたい」と回答した。

 

県議会議長へも要望

 大石知事への要望を終えた同日、白川市長と豊坂議長、鵜瀬県議は県議会議長室で中島廣義議長に要望書を手渡した。

 中島議長は、空港滑走路延長については「国が定めた採択条件である滑走路延長が必要となるような機体の見込みがないことを県担当からは聞いている。今後、必要となる機体の可能性があるのかによる」と答えた。

 洋上風力発電導入事業については「法で手続きが定められており、県に対して提言しておく」とし、磯焼け対策は「地元の意見をもとに検討する」とした。