2023.10.24県知事へ要望10項目、主要項目の進展を求め昨年に引き続き再提出

今年も主要要望の進展に至らず

 白川博一市長と小金丸益明議長、鵜瀬和博県議は11日、県庁で大石賢吾知事と面会し、10項目の要望が記載された今年度の県への要望書を手渡した。主な項目には、壱岐空港の滑走路延長を視野に入れた空港整備、洋上風力発電導入促進に向けた県への支援と市外利害関係者へ理解を求めるリーダーシップ、磯焼け対策への積極的な支援拡充など。空港滑走路案で大石知事は「莫大な費用がかかる」と今年も難色の回答を示し、洋上風力発電については「地元が中心となって理解と調整を求む」と述べ、主要な議論は平行線のままで終えた。

 

空港滑走路延長案、「莫大な費用」を理由に平行線

 「空港整備には莫大な費用がかかる」。空港滑走路延長案に対して、大石知事の第一声だった。続けて「県単独ではなく、国の支援が必要」と前置きし、「必要となるような就航の見込みがなく、滑走路延長ということ自体が難しい」と明確な結論を示した。

 市は、平成28年度から継続して壱岐空港の整備の要望を続けている。特に現空港の滑走路長1200㍍に対して、あらゆる機種が離発着可能となる滑走路長1500㍍案を掲げる。

 要望書には「本市の空の玄関口として市民生活を支え、観光業をはじめとする本市経済になくてはならない交通インフラとして、重要な役割を果たしている」とする。

 白川市長は自らの言葉で「将来の空路の維持存続と地域振興の発展のため、どの機種でも離発着できる滑走路最低1500㍍以上の整備を推進し、民間主導の空港整備促進期成会も、本空路の維持、存続、地域振興のため全力で取り組んでいく決意がある」と力説した。その上で「1500㍍以上の滑走路を有する空港整備調査費の予算を要望したい」とした。

 大石知事は、平成31年度航空法の改正に伴い令和8年度末までに設置基準への対応が求められる滑走路間安全区域RESA(リーサ)について「早急な対応が必要になるので、滑走路延長とは別に、しっかりと対応していきたい」(※壱岐空港では現状両端135㍍の確保が必要)と述べ、滑走路延長案とは切り離す考えの回答をした。

 知事面会後に白川市長は、「知事が示した『莫大な費用がかかる」については、就航する機体がなければ空港は作れないとする大前提が崩れない限り、知事はそのように回答せざるを得ないだろう」と答えた。また、「RESAの設置で空港整備は完了と思われるのが一番怖いこと。市はあくまでも滑走路1500㍍実現であり、その考えの灯火は続けていく」と今後も要望を継続する考えを述べた。

 

洋上風力発電導入促進「地元中心で」

 2020年から要望している洋上風力発電導入に向けた協力と支援は、現在、白川市政が目指す一丁目一番地と言っても過言ではない項目。

 昨年度末の市洋上風力発電等導入検討協議会からの意見をまとめ、県を通じて国に情報提供することの承認を得た上で、4月に県へ当該関係情報を提供したが、県から国への情報提供は見送られた。これにより、本年度の導入促進は不可となった。理由には「自衛隊レーダーの干渉」「利害関係者(漁業者など)の理解」などがある。

 市は、本市周辺海域での洋上風力発電の導入で適地となる海域が一般海域となり、市外の漁業関係者についても一定の理解を得ることが必要になることから、要望書には「市外の利害関係者等との合意形成は、市だけでは対応が困難。県にリーダーシップを発揮していただき、協議調整への支援、県内市町と連携をお願いしたい」とした。

 この要望に対して、大石知事は「国も地元調整については、まず地元自治体で行うべきだと考えている。県としても、まず地元である市が中心となって関係者の理解調整をお願いしたいと考えている」と厳しい回答だった。今後、市で新たな候補海域が設定された場合「市が、漁業関係者などの利害関係者を整理した上で協議をしていただきたい」と付け加えた。

 市が進める洋上風力発電の実証事業にも言及した。「実証事業を通じて漁業や自然環境への影響を把握すること。洋上風力発電の理解を深めるために有効な手段の一つであると認識している」と一定の理解は示したが、導入促進と同様に「利害関係者などの理解が得られた上で、市と連携し、県としても国などの各種支援措置の有効な活用方法について検討していきたい」と述べた。

 県にリーダーシップを望む要望を受け、大石知事が示した「地元を中心とした理解と調整をお願いしたい」の回答に対し、白川市長は「沖合1・5㌔以上は共同漁業権があり地元の漁協の権利が及ばない地域になる。この地域は平戸市や佐世保市などの船舶が操業し、風力発電が邪魔になるから反対することがある。市のみでの話し合いには限界がある。よって、県が主導し導入エリアを除いた操業での許可を求めている」と本市の取材で話した。

 

藻場回復を新たな収入源に。県に支援と協力を

 磯焼け対策に関する支援拡充の要望は2019年から始まった。本市周辺海域は、近年の温暖化による高水温の影響や植食性動物の食害、台風などによる藻場の破壊により磯焼け問題が進み、水産業への影響が深刻となっている。

 本市では、イスズミ捕獲に関する助成制度を平成31年度に創設、翌年度から海藻の増養殖対策として仕切り網などへの助成を実施するなど対策を進めている。市内5漁協・県・市で母藻を漁協間での融通等を可能にする「壱岐海域における母藻供給ネットワーク構築に向けた連携協定」を締結するとともに、関係機関で組織する「市磯焼け対策協議会」を設立し、磯焼け対策を積極的に取り組んでいる。

 結果として取り組みの成果が現れ、特に郷ノ浦町漁協管内では仕切り網を実施していない海域で広範囲に大型海藻(ヨレモク等)の再生が見られるなど、藻場の回復状況がある。

 さらに市は、回復した藻場で申請者(ブルーカーボン生態系の養殖現場の関係者)の二酸化炭素吸収量を企業などが買取り、買い取った企業の二酸化炭素排出量と相殺させ、クレジット化するブルーカーボンクレジットの取り組みを進めている。そのため、申請に対する支援や協力、核藻場となる大規模な仕切り網による藻場造成を要望した。

 大石知事は「ブルーカーボンクレジットは、磯焼け対策に非常に有効な取り組み。今後も仕切り網による藻場増生は続けていく」と前向きな回答を得た。

 

県議会議長へも要望

 大石知事への要望を終えた同日、白川市長と小金丸議長、鵜瀬県議は県議会議長室で徳永達也議長に要望書を手渡した。

 徳永議長は、空港滑走路延長について「離島の課題であり、観光振興や災害対策上、必要性は高い」と理解を示した。

 洋上風力発電導入事業については「市外利害関係者への理解は難しい。国のルールを変えるなど、県から国へ要望する方法もある。ともに解決を探る」とした。