2023.10.10納得に至らない話し合いに疑問

 ついに、いきっこ留学制度の第1回運営委員会が始まった。3月の留学生死亡事案以降、市民の関心はいまだ続いている中、どのような話し合いが行われるのか、多くの注目が集まっていた。

 先に県が進めた離島留学検討委員会は、本市で起きた事案だけではなく、対馬市や五島市の留学制度も同様に検討するため、多くの不足感を残したまま終えた。今回のいきっこ留学の運営委員会は本市のみの制度に的を絞った内容。県では不足感があった検証からさらに踏み込んだ内容になるものと期待した。

 しかし、第1回目の傍聴で思ったこと。「県の検証内容とほぼ変わらない。特に留学生死亡事案の検証と原因究明に新たな調査報告は一切ない。改善案も、やはり継続ありきのもの」。そして最も驚いたのは、始まったばかりの1回目の委員会からわずか4日後の1日から、来年度いきっこ留学生の生徒募集を開始するという。この決定について、他委員からの異論がなかったことも大きな違和感となった。

 この委員会は名称が示す通り、すでに「検討」ではなく制度「運営」の委員会だったことを不本意ながら理解した。いきっこ留学の検証は県が示した離島留学検討委員会の部会がその役割だったというが、本当に十分な検証だったのか。「死亡事案」の検証は当然として、これまでに校内でのいじめなども起きていたとの情報もある。しかし、事実確認はおろか、議題にも上がっていない。学校および市教委には関連の報告は一切なかったと言うことなのか。

 3月30日に開催した総合教育会議で白川博一市長は、「自己評価ではなく、外部からの検証は必要。第三者委員会を立ち上げる」と明言したが、きちんと機能した第三者委員会を開いたと言える検証だったのか。

 市議会9月会議の先月13日、植村圭司議員の一般質問で「どういう方法で改善検討を進めるのか」の問いに対し、山口教育長は「県の検討委員会では検討しなかった内容も協議する」と答えているが、今回のいきっこ留学に関する委員会のどの部分に該当するのか。市長の言葉も教育長の言葉も、納得するまでには至らない。

 ちまたの話題を持ち出すのも気が引けるが、ジャニーズ事務所の性加害問題も問題点を棚上げし、何もなかったかのように時間が過ぎていった。しかし、現在は社会を揺るがす大問題に発展している。数十年にわたり問題点から目を背け、十分な検証をしなかったからだ。この両問題はどこか共通点があるように思えてならない。