2018.12.04市民の利便性に影響か「来年度からの市ケーブルテレビ運営」

来年度からの市ケーブルテレビ運営に暗雲

 

 開局から約7年間にわたり市ケーブルテレビを運営している指定管理者の壱岐ビション(代表取締役・三須久/関西ブロードバンド株式会社代表取締役)は来年3月31日で指定管理を終え、新たに光ネットワーク株式会社(代表取締役・陶山和浩)が管理者として運営を担う。市はスムーズな業務移行を目指しているが、管理会社所有の権利や著作権など、法的な理由から簡単に移行や譲渡できない部分があり、今後の調整に難航している。新たな指定管理開始時までに移行が終わらない場合は、壱岐ビジョンを通じて多くの市民が活用しているパソコン等のアドレスや電話が、4月1日から使えなくなる可能性がでてきた。

 

 市ケーブルテレビで開局から現在に至るまでの約7年間、市内で約3000人の契約者がいるIPアドレスや、約4000人の契約者のIP電話は、壱岐ビジョン側に業務権利がある。またこれまで放送局に蓄積されている映像などのデータの著作権も同社となるようだ。これらの権利は壱岐ビジョンが開局から自社努力で構築してきたもの。三須社長は「壱岐ビジョンの暖簾(のれん)を掲げてこれまで社員と共に頑張ってきた。どこの民間企業も同じだが、社の財産は築き上げてきたデータと利用していただいた顧客。それと社員だ」と話し、業務を振り返った。

 全国的にもケーブルテレビの業務移行は例が少なく、ほとんどが開局に携わった会社が特別な事情がない限りは運営を続けていくことが通例となっている。そういう事から調整を進める市は、難航する移行に頭を抱えている。

 市の政策企画課は「現在、新旧の管理者同士の協議は進んでいない」と話した(11月26日の時点)。指定管理者の業務開始は来年4月1日からで、移行期間はわずか4ヶ月しかない。

 当紙が調べた想定では、3月31日までに移行が進まなかった場合は、4月1日からパソコンなどインターネット利用者のIPアドレス(@hm.iki-vision.jpなど)が使用できなくなる。IP電話契約者の電話も通話不可となり使えない。またケーブルテレビの番組「今日もきばっち」など、壱岐ビジョン制作の番組も著作権の関係で放送できなくなる。その他にも壱岐ビジョンが構築したデータやソフト類も法的な理由から使用は難しい。

 三須社長は「できる限りスムーズな移行で、市民の利便性に影響ないようにしたいのだが、未だ協議の段取りが進んでいないようだ。どう対処したらいいものか」と頭を抱える。

 市に確認したところ「年内には新旧指定管理の両社と市と3社で協議を進めていく用意がある」と答えた。しかし協議が難航した場合には、先に挙げたように各種サービスが使用不可になる。また光ネットワーク側が新たにIPアドレスなどサービスを提供しても、約3000人の利用者は自ら再契約と登録設定をしなければならない。どちらにしても指定管理変更に伴う利用者側のリスクや労力は避けようがない。

 IPアドレスを使用する市民は「数ヶ月しかないのに移行は間に合うのか。利便性で言えば、このままのアドレスが使えればいいのだが」とため息をついた。