2020.4.28新市政初の施策に不満あり

 新型コロナウイルス感染拡大による島内経済の悪化を受け困窮する事業者のため、市は支援策として2つの政策を示した。一つは飲食店などを支援する商品券の発行、もう一つは観光客激減で消費が落ち込む宿泊やバスツアーに対して、補助金で市民に割安で提供して経済を回していくというもの。

 この危機的経済状況下で、ありとあらゆる支援策を打ち出していくことに異論はない。むしろ矢継ぎ早に第2弾、第3弾と支援策を打ち出していかねば、困窮に喘ぐ市内事業者への救済は間に合わない。現在、国内のみならず世界各国で猛威を振るうコロナ禍は、2008(平成20)年9月に起きたリーマンショックによる金融危機はおろか、1930年代にアメリカを皮切りに起こった世界恐慌の再来とさえ言われる。事態は島内だけの問題ではないが、この状況を乗り切るには、各自治体独自の施策がなければ不可能だ。

 今回、飲食店に向けた支援策は、商品券を使用した場合に割引が適用される。しかし、利用可能なのは飲食関係の限定だ。また、観光支援策は市民の島内宿泊施設利用で半額、島内バスツアーは市民が千円で利用し、島内観光をするもの。この二つは、コロナ禍で特に影響を受けた業種と言えるようだが、経済や産業はリンクしている。後に続くのは物流であり、農漁業であり、他サービス業などだ。やはり矢継ぎ早にせねば状況は悪化の一途で、経済的に耐えきれなくなった事業や商店が廃業に追い込まれる。

 また、支援策の規模と内容もいかがなものか。千円の商品券を発行するのであれば、利用者購入ではなく、いっそのこと全市民に無料配布という案はなかったのか。千円商品券は4万枚発行なので、全て無料配布しても4千万円だ。市の財政は決して楽ではないが、今回の支援策の予算は全て国費によるもの。やりようでは不可能ではなかったはずだ。この状況下では思い切った支援策でないと効果は厳しい。

 さらに、市民活用のバスツアーや宿泊の利用だが、他産業の経済悪化に向かう中、多くの市民が宿泊するだろうか。3密で感染防止をせねばならない中、相反する環境のバスに多くの市民が乗車するだろうか。まずはやれることからの考えだろうが、同じやるなら最大効果を考えた支援策が良くないだろうか。新市政での初の施策がこの程度の内容ならば、この先思いやられるのだが。

 市長選で落選はしたものの、森氏が掲げたコロナの影響による経済政策は「ただちに市内中小業者に5千万円の緊急基金設立。財源はふるさと納税と市長給与カットから」「コロナ対策サポート窓口をつくり、助成金などの手続きの支援」「供給が間に合わないマスクを、市内企業に協力を要請し、市内産のマスクの生産と供給」などを訴え続けていた。また、経済支援政策以外にも、各港や空港などの感染水際対策や、高齢者の感染防止策があった。

 この段階でどちらがどうという気はないが、市内事業者への支援は、思い切った策を素早く大胆にせねば効果は生まない。また、実際に起きている各事業者や個人店の状況を、「直接見て、聞いて、考えて」いかねば、本当の支援策など作れるものではない。もう少し良い案はなかったものか。

 この先、第2弾、第3弾と支援策を進めていくのであれば、市民が進んで活用し、市内経済を活性化させて困窮する事業者が生き残れるような救済策を示してもらいたい。新市政への期待と責任は大きい。(大野英治)