2021.5.22市民へ痛みを強いる「健全」など無い
市長に向けたリコール署名活動は、市の財政状況が焦点となっている。市民団体の「市の財源が枯渇する」という主張に対し、市長は「市の財政は健全」と反論する。当紙も今回のリコール活動以前から、市の財政状況に対して警鐘を鳴らしてきた。
市議会2月会議で市長は「予算編成で大幅な財源不足を招くことになった。今後、従来通りの住民サービスを維持していくことが困難になった」と説明している。3月会議の施政方針では「毎年度の予算編成において大幅な財源不足が生じ、財政調整基金など基金からの繰入れを前提とした予算編成を行い、実際の決算においても、基金を取り崩し続けている。市民生活にも少なからず影響する経費の節減、受益者負担の適正化など、大きな痛みを伴う項目についても行財政改革を断行していかざるを得ない状況に至っている」と述べている。
今年度の当初予算は、前年度当初予算比で18億2千万円減(7・7㌫減)となり、基金からの繰り入れで予算編成した。この状況について白川市長は「これにより基金残高が56億円程度となり、次年度以降基金の繰り入れは困難になるものと考えられる」とした。この状況から現在のリコール活動は、「財政は健全か否か」を見極めるのが、ひとつの焦点となっている。
そもそも市長が言う「健全」の言葉は適切なのか。「健全」を辞書で引くと「考え方や行動が偏らず調和がとれていること。物事が正常に機能して、しっかりした状態にあること」とある。先に述べた施政方針を要約すれば「財源不足であり、基金を取り崩している。将来の財政のため、市民に痛みが伴う改革が必要」となる。これを健全と言い切るのはどうか。どうみても健全とはほど遠い状況に思えるが。さらに市長は2月会議では財源不足だと言い、現在では財政は健全と言う。矛盾した言葉ではないのか。これでは市民の混乱を招くだけだ。
記者も一市民であり、あくまでも市民目線で言う。財源不足による住民サービス低下で市民に痛みが伴う改革は、少なからず事業者の売り上げや市民生活に影響を及ぼしているのを理解しているだろうか。当紙も市内で商売をする事業者のひとつ。市の財源不足による予算削減の余波に加え、昨今のコロナ禍と二重の打撃を受けている。この状況下で事業者や市民は、「財政は健全」と言われ素直に「ああ、そうなんですね」と納得するはずがない。
政治家の言葉は重い。当初の発言は、その後も影響を及ぼし続ける。始めは「市は財源不足」と言われ、その後に「財政は健全」と言われても市民は困惑するだけだ。そもそも財政が健全であれば、高齢者や住民向けのサービス低下、補助金の削減をどう理解すればいいのか。市長は「将来に向け、基金の取り崩しをしない財政改革を行う」と言うが。
「財政が健全」の裏では、予算削減により市民は痛みを伴いながら事業や生活を続けている。このまま削減を続ければ市の財源は回復し、健全に向かう。しかし、市民の生活は困窮を強いられる。「財政は健全、市民は困窮」では、一体誰のための市政運営なのか。矛盾だらけだとは思わないのか。