2023.11.28島外避難の計画を明確にすべき
毎年恒例の原子力安全連絡会が17日に開かれ、来年2月に予定される原子力防災避難訓練の概要などの説明があった。しかし、昨年の訓練にあった島外避難の項目が今回の訓練には含まれていなかった。四方を海に囲まれた離島民の最も危惧する部分は、放射性物質の流れによる逃げ場のない状況であるにも関わらず省かれている。
昨年は10月29日、通常行っている島北部への避難訓練に加えて、住民を島外へ搬送する広域避難訓練も実施された。避難先は福岡県を想定し、海上自衛隊の艦船で郷ノ浦港と石田町の印通寺港からそれぞれ住民が乗り込んだ。全島民避難の場合はどうなるのかなどの疑問は残ったが、実施されたことには大きな意味があるとして、一旦納得したつもりだ。
冒頭で述べたように、今回開催した連絡会の資料に島外避難の内容は一切記載されてはいない。このような資料自体に疑問を感じるのは島民であれば当然のことのように思うが、連絡会出席者による質疑では、島外避難についての質問がなかったことが不思議でならない。本来であれば、最も本市民が危惧している部分であり、方針を示してもらいたいと望んでいる部分であるからだ。そのために、市民の中から選ばれた連絡会委員ではないのか。
昨年、7月29日に開いた連絡会で、県危機管理課は島外避難について次のように述べている。「いったん北部へ避難するが、その後、島外避難が考えられる場合は郷ノ浦港や印通寺港など南部に戻り避難する」。理由として「しばらくの間の屋内退避であれば健康面への影響はない」と説明する。原発事故により30㌔圏内の住民は被曝を避けるため、いったん島の北部に避難するが、さらに事態が悪化し島外への広域避難が発令された場合、再び島の南部に戻り、島外避難せねばならない。これが昨年までの県の見解だ。
原発から一部地域が30㌔圏内に位置し、2万5千人規模の離島は全国的に見ても本市くらいのものだ。離島であるがゆえ、バスや自動車などの交通機関を使った広域避難はできず、ほぼ海路による避難を余儀なくされる。全島民避難にかかる日数は想定では約5日半とされる。まさしく危機的な立地にあるのが本市だ。
当紙はこの件について、会終了後、県の担当者に質問を投げかけた。県の回答は「壱岐市の島外避難は想定の上で昨年は訓練に組み込んだが、訓練計画の中にはないのが実情。福岡県の各自治体とも住民受け入れの交渉はしているが、決まってはいない。まずは屋内退避を前提にしてもらいたい」という。
想定と計画では天と地ほどの違いがある。想定はあくまでも想定。計画にないものは実行されない、いや、できない可能性が高い。このような状況のままで、有事の際に島民の生命は守られるのか。島外避難はすでに数年前から言われてはいるが、一向に進展はない。そもそも、連絡会で市民代表の委員が問わないのはなぜなのか、疑問でしかない。早急に計画に盛り込むことこそが、委員が声をあげて言うべき意見ではなかったのか。