2022.11.22将来の園児のため納得いく説明を

 郷ノ浦町柳田地区で認定こども園「いきひかりこども園」の2024年4月の開園に向け、建設計画を進める社会福祉法人北串会による保護者説明会が6日、壱岐の島ホール大会議室で開かれた。この日の説明で、工事は来月から着工、翌年12月までには完成する見通しがわかった。

 今回の説明会は、基本的に現在の保護者に対しての内容だったように感じられた。多くの市民も同様の認識であったように思われる。と言うのも、同会が配布した説明会案内チラシには「保護者説明会を開催」とあったためだ。説明会自体も、施設説明や安全対策、開園延期の理由など同会の言い分を説明する現在の保護者対象の内容であったため、チラシタイトルに偽りはないのだが。

 しかし、建設地の見直しを要求する市民団体「壱岐のこどもの健やかな育ちを守る会」をはじめ、当紙も以前から「将来の保護者になるであろう、あるいは孫が通うことになるであろう市民」に向けての住民説明会の開催を求めてきた。このことについては7月22日、当紙の取材に対して同会の中路理事長は明確な返答を避けた。何よりも、取材記事には住民説明会に関する部分には触れないようにとの要求もあった。

 市民団体も「建設場所に反対する署名」活動で、同会に対しての要望事項に「予定地の現地見学会を実施し、住民説明会を実施すること」としている。市議会9月会議の一般質問では、5人もの議員が同園に関する質問をし、数人の議員が住民説明会の開催や、市民に対して同会の対応が倫理と道徳に欠けるなど指摘。同会と協議を重ねてきた市に対しても厳しい意見をぶつけた。

 市民団体や建設地反対に署名した市民らの住民説明会開催の要求について、市子ども家庭課は「市主催の説明会はしない。事業者側の判断に委ねている」と答え、白川博一市長も「市の事業ではないため、同会に言ってもらいたい」などの旨の返答を繰り返している。この押し問答が7月ごろから続き、約4か月経った現在も、開催に向けた前向きな回答は得られていない。

 法律の専門家によれば「民法・建築基準法・建設業法上、建物を建築するにあたって、建築主に周辺住民の方への説明義務を課した規定はない」とするも「将来に渡り地域住民との円滑な関係性を築くためには必要。誠意を示すもの」との考えもある。要するに、住民説明会開催は事業者側の誠意に委ねざるを得ない。

 同会に対して、再びお願いしたい。現在の園児や保護者のためだけではなく、将来の利用者となる子どもや保護者、孫のことを想う祖父母のため、きちんとした住民説明会を開催してはもらえないだろうか。

 現在の建設予定地に反対の署名は約3千人に及ぶ。本市の人口から見て、決して少人数ではない。多くの市民は認定こども園ができることに真っ向から反対はしていない。ただ、なぜ土砂災害や交通事故などの危険地でなければならないのか。この1点に尽きる。多くの市民の疑問に応えるため、住民説明会は必要だと認識してもらいたい。ぜひ、市民の思いに応えてもらえるよう、誠意ある対応に期待する。