2022.11.29新型コロナ陽性者、今月上旬から再び増加傾向

 県内および市内で再び新型コロナ感染症の感染拡大の兆しが始まった。9月上旬以降、陽性者の全数公表を控えた市は21日、再び一週間単位の全数公表を決めた。公表データには、7日から13日までの一週間で241人の新規陽性者が確認された。市内の保育所では15日、職員11人と園児4人のあわせて15人の感染がわかり、クラスター(感染者集団)が発生した。公表にある発生状況では、全世代のうち10代未満から10代の陽性者割合は計42㌫におよび、子ども達へ感染が広がっていることがわかった。

 

県下で陽性者比率が最も高い壱岐市

 9月9日以降、県内の新型コロナ陽性者の全数公表が途絶え、正確な新規陽性者数は不明のままだった。しかし、市は21日、「17日より、各市町ごとの発生状況を一週間分まとめて公表する」とし、全数把握の見直しと全陽性者数を公表すると発表した。

 市が公表した陽性者数は、10月31日から6日までが計172人、うち10代未満から10代の陽性者割合は計54㌫。7日から13日までが計241人、うち10代未満から10代の陽性者割合は計42㌫。今回の公表で、ようやく市内陽性者状況がわかった。

 21日以前までは、陽性者発生届があった分のみの公表だった。そのデータでは11月上旬以降、本市の陽性者数届出は県内届出数でみる人口比の割合からも、高い傾向にあることが示されている。

 例えば10日公表分の陽性者届出で、本市18人、対馬市1人、五島市7人、諫早市6人など。本市よりはるかに人口が多い長崎市は25人、佐世保市26人と、人口比率でみれば突出する。このことから、本市は現在、県内他市と比べ最も多く陽性者率が増加している自治体であることがわかる。

 陽性者数公表を取り止めたのは、9月上旬からの感染症法施行規則の改正に基づく。新型コロナの発生届の対象が65才以上の人、入院を要する人などに限定され、全陽性者数の公表は行われなくなった。このことから市民の間では不正確な感染者数の憶測が飛び交う事態にもつながることになった。

 現在、本市において2か月ぶりに感染拡大が猛威を振るおうとする兆しが見える事態について、市危機管理課は17日、「福岡市とのつながりによる人の流動がある。子どもから大人への家族感染も報告される。来島者や子どもの島外遠征などの規制がない今、より慎重な水際対策が必要となる」とするが「市民の行動制限は子どもの教育や地域活動の制限となってしまう。観光など経済への影響も懸念される」として頭を抱えている。

 

12月上旬には変異株増加の予測

 15日、オミクロン株の変異株で「ケルベロス」と呼ばれるBQ・1・1系統が、県内で初めて確認されたと発表した。ゲノム解析の結果、先月16日から22日にかけて検体を採取した15人のうち1人がBQ・1・1系統と判明した。

 海外で増えている「グリフォン」や「ケルベロス」と呼ばれる新しい変異株は、12月には国内にも置き換わりが進むと見込まれる。オミクロン株系統のBQ・1からさらに変異したケルベロスなどの変異株は、これまでの株よりも免疫をすり抜ける力が強いとの分析がある。

 最新の報告では、10月末までの日本国内ではオミクロン株の「BA・5」系統が96㌫を占めているが、9日の厚労省の専門家会合では、10月中旬の段階では約1㌫しかないBQ・1系統が、11月上旬で約10㌫、さらに12月上旬には約80㌫になるという推定値が発表された。

 

抗原検査キット自宅配送の活用を

 9月9日以降の新型コロナ陽性者の全数把握の簡略化により、陽性者の対応は高齢者や妊婦など、重症化リスクが伴う患者への対応が重視されるようになった。全数公表を決めた現在も、この方針に変更はない。

 しかし、問題点もある。陽性者の中で症状がなく軽症の場合は、自宅療養などの自己管理に委ねられるため、スーパーや商店など人が多い場所へも移動しているようだ。ある市民は「陽性者と思っていた人がスーパーで買い物をしていた」と話す。重症化リスクがある人を除き、自己責任と自己管理が重要となる。

 県は9月上旬から、中学生から65歳未満の県民で、基礎疾患などがなく発熱や咳のような症状がある人に対して、抗原検査キットの配布を行なっている。県ホームページで「抗原検査キットの配布」と検索し、申し込みフォームから検査キットの自宅配送を申し込むことができる。

 陽性と判明した場合は、キットに同封の案内チラシにしたがい、住所や症状の入力と本人確認書類(免許証又は保険証)、検査結果(検査キットの写真)の画像を添付し陽性者判断センターに報告となる。結果判定後、療養中の健康相談先など、療養に関する案内がショートメールなどで届く。

 壱岐市保健所によれば「市民への周知が行き届いていないことから、概要を記したチラシの全戸配布、市ケーブルテレビで周知を行う」と話した。また「今年はインフルエンザと同時流行の予測があり、医療機関のひっ迫を回避しなければならないので、ぜひ検査キットの活用を」と市民に向け警鐘を鳴らした。

 今月に入り、全国的に感染第8波が起こると予想されている。ようやく感染者の全数把握が行われることになった今、感染防止対策と対応、陽性の可能性があると思われた場合の責任ある適切な自己管理が必要となる。