2019.8.13利用者の利便性に最善の策を求む

 未だ明確な解決方向が見えてこない、市ケーブルテレビの指定管理者業務移行の問題は、市議会8月会議を経て大きく動きそうな気配が出てきた。

 これまで、市と関西ブロードバンド株式会社(以下、関ブロ)は、昨年11月から指定管理者業務の引き継ぎに関して度重なる協議を繰り返し、双方の代理人弁護士を介した法的な解釈を調整する話し合いを行っている。3月時点の予定では、5月末までに合意を交わし、来年度から新たな指定管理者に指名されている光ネットワーク株式会社(以下、光ネット)への業務の完全移行を目指していた。しかし、現時点まで話し合いはまとまらず、合意も交わせていない。

 

 停滞する双方の話し合いに業を煮やしたのか、市は市議会8月会議で来年度以降の市ケーブルテレビ運営について、光ネットで進めていくことを前提とした、新たなインターネットサービスや利用者契約を推し進めていく方針を見せた。

 これまでの協議で、関ブロは利用契約者の個人情報の取り扱いを問題視し、約8年前に市と結んだ協定書の解釈を問うた。同様に市も、協定書の解釈を問い、個人情報や機器を含めた権利は、市と関ブロかを問うている。

 しかし、このまま法的解釈の争いを続けていくのであれば、今年度どころか、来年度以降さえも解決の目処は見えてこない。そうなれば利用契約者は「現在使用中のインターネットアドレスはいつまで使えるのか、IP電話はどうなるのか」などの先行きの不安を抱えたまま利用を続けていくことになる。

 さらに、協議が始まって以降、市ケーブルテレビ番組審議委員会の開催も滞り、番組編成や意見が反映される番組放送でも、市民は置いてきぼりを強いられている。

 

 ある市民が言った言葉が印象に残る。「市と関ブロの協議の中で、契約者の個人情報取り扱いが争点になっている。言い換えれば、我々が人質にされているに等しい」。まさしくその通りだ。市ケーブルテレビと契約した我々市民が望むものは、日々の利便性とサービス向上、離島でありながら都会並みのインターネット環境などだ。市と関ブロの協議に、利用者が振り回されるのは「勘弁願いたい」というのが一般的な本音だろう。

 今回、市は議案で思い切った案を提示してきた。補正予算も多額だ。しかし、このまま利用サービスが不明確で、先行きが見えない協議を重ねるくらいなら、今後何十年と長期を見据えた方針の方が、現実的な解決策ではないか。議案を見て補正予算額に驚くが、機器更新の必要経費も含まれる。また、市民の利便性確保と早期解決には、他に打つ手がないようにも思える。今一度、足元を固め、再構築へ向けた生みの苦しみか。

 

 市民に対して市は、しっかりとした説明の機会を設け、理解を求めていく時期にある。「なぜこのような事態が起き、なぜ指定管理者移行が起きたのか」を説明せねば、市民は「多額の予算が追加されるくらいならば、なぜ以前のままでいかなかったのか」と新たな疑念を生みかねない。今は正念場だ。市民の利便性のために全力で理解と解決への道を進めてほしい。そういう方針ならば、当紙も応援したい。(大野英治)