2019.8.27(市ケーブルテレビ)運営再構築を決議、関ブロとの交渉カードか

市ケーブルテレビ業務移行が難航のため6億6000万円の補正予算可決

 

 市ケーブルテレビ指定管理者の業務引き継ぎが難航する中、市は9日に開会の市議会定例会8月会議で運営再構築のため6億6000万円の補正予算を計上し、賛成多数で可決した。しかし、議員は「なぜ引き継ぎができないのか、市民にわかるように説明をすべき」と要求した。さらに「指定管理者が変わるたびにこのような問題が起きかねない」などの意見が飛び交った。市は「最悪の場合の予算計上」と説明し、白川博一市長は「補正予算は断腸の思いで決めた。現指定管理者の対応は不条理だ」と思いを述べた。また「今後も合意に達するよう、腰を据えて話し合う」とし、今回の可決を経た以降も交渉を進める意思を示した。

 

 市は、現指定管理者の関西ブロードバンド株式会社(以下、関ブロ)から、新指定管理者の光ネットワーク株式会社(以下、光ネット)への業務引き継ぎが難航し、「このままでは来年4月以降の光ネット管理によるサービスができない事が予想される」と議案上程の理由を説明した。

 議案は、関ブロとの業務引き継ぎ交渉とは別に、市で新たにサービス体制を構築するもの。また、今後の指定管理者指名で、今回のような契約の解釈の食い違いなどの混乱を避ける意味もあるようだ。市は、「市民へ支障なくサービスを提供するため、運営の再構築を判断した」と、補正予算の必要性を述べ、再構築には最低でも6か月の期間が必要になるとも付け加えた。

 財源は、合併振興基金から6億5300万円、一般財源から700万円を充当する。しかし、多額の予算案に音嶋正吾議員は「6億6000万円は補助金のない予算だ。これまで順調に積み重ねてきた事業に、合併振興基金を取り崩して行う。おかしいではないか」とし、「関ブロとの協議が合意に至らないから、今回再構築する。あまりに安易だ」と憤った。

 今回の可決を受けて後日、関ブロ側は「詳細についてはまだ確認中であり、今のところは何とも言えない。この件についての説明の機会はいずれ設けたい」と話した。

 今回の決議を経て、市は関ブロとの合意に向けた交渉とともに、新たなサービス体制に向けた再構築を推し進めていくことになる。

 

再構築に必要な6億6000万円の内訳

 再構築に必要な経費は、通信機器の仮設費用や再加入のための各戸調査費、顧客情報の委託料に1億5094万2000円、通信機器の代替え対策に4400万円、事務費606万1000円で計2億100万3000円。このうち、条例と協定書に基づく引き継ぎ対象資産は、関ブロに請求する予定だ。

 関ブロが調達している機器などを、市が新規に整備するためにかかる予算として、インターネットメール用サーバーなどの機器購入や設置設定に1億3233万円。IP電話用ターミナルアダプターの交換機器に4433万円で計1億7660万円。今後の指定管理者変更をする場合に、スムーズな移行を進めるため、機器類の所有は市になる。整備にかかった費用は、新指定管理者から使用料を徴収していくとのこと。

 市が現在、所有している機器の更新では、センターおよびサブセンターの通信機器として、2億7247万円、設計管理の委託料986万7000円で計2億8233万7000円を予定している。

 また、再構築ではケーブルテレビやインターネット、IP電話などの加入者情報の引き継ぎが行われないため、来年度は再度、加入者申し込みが必要となる。

 ただし、市は「今回の補正予算は最悪の場合の想定であり、早期に関ブロとの合意がなされた場合には改めて予算の組み換えを行う」と説明した。

 

予算の出元は合併振興基金から

 今回、6億6000万円もの補正予算の財源は合併振興基金からの捻出を主なものとする。音嶋議員は「合併振興基金の条文には『市の地域振興に資する事業の財源に充てるため』とある。また、『条文に規定する目的を達成するために財源に充てる場合に限り処分することができる』とある」と用途を示した。

 また、「これまで、市が積み立てて貯めた合併振興基金を崩すと言うからには、市長は腹を据えて取り組んでもらわねばならない」と予算決議を前に念を押した。

 白川市長は「腰を据えて相手と交渉するため、再構築に向けた予算を出すということは、断腸の思いだ。しかし、再構築により市民には迷惑をかけない、この決意があるからこそ予算を上程した」とし、さらに「合意に達するよう、腰を据えて交渉することを約束する」と、補正予算が関ブロとの交渉カードになりうることも示唆した。一方で白川市長は「私に言わせれば、不条理な関ブロの対応であると思っている。先日、先方から面会の要請があった。私は会う必要はない、契約書通りやってくれと断った」と厳しい対応をしたことも報告した。

 

回収可能な予算と説明

 市の説明では、再構築のための準備や必要な経費に約2億の予算がかかるが、その分は現指定管理者に請求して回収するという。可能となれば、今回の予算のうちの約2億は回収でき、また、新しい指定管理者となる光ネットから今回導入予定の機器類の利用料を徴収すれば、使用料として回収できるとする。概算では、6億6000万円のうち、約4億円は回収可能と試算している。

(主な質疑は本紙に掲載)