2023.4.25今後の対応と責任を見定める
最近の社説の記事を読んでからなのか、教育関係者や一般の人などから「いきっこ留学と離島留学の制度は別物。同一に語るものではない」という指摘があった。指摘の意味はよくわかる。確かに、いきっこ留学は市が行い、’離島留学は県が行う制度になる。
今回起きた、行方不明から死亡事案に至った男子高校生の場合、県が推進する離島留学制度を利用した生徒になる。しかし、この男子高校生の場合は、中学2年生の時にいきっこ留学で壱岐に住み、そのまま高校進学を契機に離島留学に移行した流れだ。もとをたどればいきっこ留学生になる。
さらに言えば、行方不明と死亡に至る一つの要因として、中学校の時からの校内でのいじめもあったと聞く。当時を知る保護者や同級生からの情報であり、真実性は高い。しかも、学校や市教育委員会はいじめの報告を受けていたともいう。これらが真実ならば、死亡した高校生が抱えていた問題は、高校のみの問題ではなく、さかのぼれば中学生のころに端を発することになる。
このことから当紙では、いきっこ留学制度のあり方に問題があるのではないかと疑問を呈し、調査検証と里親や学校側などの受け入れ体制が整うまで、同制度の一旦停止を提案した。
前回号でも記したが、いきっこ留学制度が始まった平成30年度以降、留学生は増加の一途をたどっている。特に今年度は46人(里親留学、孫戻し留学、親子留学の合計)とさらに増加した。
一方で、里親留学生の途中辞退、要するに学年途中で留学が続かずに壱岐を離れる生徒もあとを絶たない。昨年度は20人の里親留学生のうち6人もの生徒が途中辞退となっている。実に3割もの生徒が学年途中で壱岐を離れ、実親の元に帰る事態を見て、何らかの問題が制度、あるいは里親宅、学校にあるのではと考えるのは一般的なことではないのか。
また、今年度のいきっこ留学生には、小学2年生児童の受け入れが含まれる。どのような事情で実親のもとを離れ、壱岐の里親のもとに来たのかはわからないが、これも一般的に見て適切だと言えるだろうか。小学2年と言えば、まだ実親に甘えたい年齢であり、親元を離れることによる精神的な弊害がまったくないとは言い難い。
市いきっこ留学制度実施要項は遂行されているのか
市が定めた「市いきっこ留学制度実施要項」の第3条には「いきっこ留学の決定は、児童及び生徒の健康状態、受入れ学校の状況、里親の確保等を総合的に勘案して、壱岐市教育委員会の承認を経て、壱岐市いきっこ留学制度運営委員会が決定する」とある。
さらに同要項の第7条には①里親は、いきっこ留学の制度を理解し、受け入れた留学生を家庭的に健やかに養育できる環境を保持できる家庭の中から運営委員会の推薦に基づき、教育長が委嘱する。②里親は、実親とよく連携を図り、受け入れた留学生を家庭的に養育し、健やかな成長に向かって努力するものとする。③里親は、この告示及び契約条項の履行を継続し難い事由が生じた時は、里親を辞退しなければならない。
離島留学生の行方不明から死亡の事案で、市や市教委は果たして上記要項をきちんと理解をもって遂行し、事案以降に調査検証をしたのか。冒頭で挙げたように「離島留学といきっこ留学はそもそも制度が違う」などの考えで問題を避けるのであれば、もはや本市の教育行政は機能していないと断言する。
「なぜ約3割のいきっこ留学生は途中辞退するのか」「小学校低学年の児童が実親を離れて暮らすことは良い環境なのか」「里親が対応できる留学生数は何人までなのか」「問題ある里親の継続は妥当なのか」。市や市教委から明確な考えは示されていない。実施要項の理解さえあれば、重要な課題であることは当然だ。
新たな年度を迎えて市や市教委の人事異動で体制が変わった。近日中には教育長の任期満了とともに任命がある。市による第三者委員会も立ち上げる見通しだ。さてこの先、市や市教委はどのような対応と責任を果たすのか。じっくりと見定めていく。