2023.4.25いきっこ留学の調査検証を要望

離島留学生の死亡事案と離島留学制度の検証を求める「第三者委員会設置」を要望

 音嶋正吾、山口欽秀、武原由里子市議は14日、白川博一市長と久保田良和教育長に対する「第三者委員会設置等に関する申し入れ書」を市教育委員会の目良顕隆教育次長に手渡した。さらに、第三者委員会設置署名代表の石本賢志さん(県内在住)がオンライン署名活動で集めた「原因究明を求める第三者委員会設置」に賛同する478人の署名も提出した。「いきっこ留学制度」(里親留学)を利用し、本市に転入してきた男子高校生が先月1日に行方不明となり、同月20日に遺体となって発見されたことへの市と市教育委員会への適切な対応を要望するもの。申し入れには「死亡事案の原因究明の調査と検証を開始し、同制度の検証を行うように。そのための第三者委員会の設置を求める」などの5項目を挙げた。

 

 第三者委員会設置の申し入れは、市の離島留学制度を使って市内の里親のもとで生活していた男子高校生が先月1日に行方不明となり、同月20日に郷ノ浦町原島の海岸で遺体となって発見されたことに関するもの。死亡した高校生は市の「いきっこ留学制度」(里親留学)を利用し、中学2年の9月に転入。その後は高校の離島留学生とし進学し、里親留学継続中に起きたできごとだった。

 石本さんは「離島留学生の死亡について原因究明を求める第三者委員会設置」を、インターネットを活用したオンライン署名活動を実施し、4月12日時点で478人の署名を集めた。同署名は市民だけではなく、国内各地からも賛同の声が集まり、死亡事案が全国的に大きな話題となり、今後の市の対応に注目が集まっていることがわかった。

 申し入れした市議の3人は「今回の死亡事案は、県教育委員会の調査や対応だけでなく、市が取り組んできたこれまでの『いきっこ留学制度』の検証が必要だと考える」とし、市側の積極的な対応を求めている。さらに「先月30日に開かれた市総合教育会議で、白川市長が提案した第三者委員会の設置に対して、二度と大切な子どもの命が失われることが無いよう早急に対策を講じるように」など、5項目の対応を要望した。

 要望の理由は、市総合教育会議での決定事項について、市と市教育委員会の今後の対応に不満を持ったためだ。同会議で上がった意見は「いきっこ留学で、今年度は昨年度以上となる46人の留学生とする」「若干の改善点はあるが、比較的満足している」「これからも同制度の良さを充実させるため、見直しをしていく」「自己評価ではなく、外部評価のための第三者委員会を設置する」「2月から担当者は不在。今後は担当職員2人を配置する」が主な意見と提案事項だった。しかし、離島留学生死亡の検証に触れる内容はなかった。

 要望した音嶋議員は「幅広い検証を進め、留学制度に反映できるように願いたい。死亡事案を起こした自治体であることを自覚し、今後の推移を見守りたい」と意見した。山口議員は「高校生死亡の原因究明は行うべき。多くの市民も望んでいることだ」と考えを述べた。武原議員は「これまで留学制度を利用した子ども達を含めて、声を聞くなどのアンケートを実施してもらいたい」と提案した。

 目良教育次長は「県が、離島留学に関する調査検証のための第三者委員会立ち上げを表明した。市が行う『いきっこ留学』と県が行う『離島留学』は制度の違いがあり、市独自の検証は難しい。しかし、県による委員会には市も参加する。県と連携し、制度のあり方をともに検証したい」と答えた。

 

県教委、離島留学課題検証の考え

 県教育委員会は13日の定例教育委員会で、離島留学制度を利用して壱岐高に在籍していた男子高校生の死亡事案を受け、同制度の課題を検討する有識者らの委員会を20日に設置する考えを示した。

 県教委は有識者、県教委、各市教委などでつくる委員会を設置し、対馬、壱岐、五島各市の検討部会を設ける。検証内容は▽壱岐の生徒の死亡▽実施校数の増加▽さまざまな事情を抱えた生徒の入学-の3点について。里親、保護者、教員を対象に調査検証する。今月下旬からアンケートや聞き取りなどで実態を調査。各検討部会で結果を分析し、課題や要望を集約する。報告を受けた委員会は8月下旬に改善策や支援内容をとりまとめる。

 

第三者委員会設置等に関する申し入れ書の内容

①今回の離島留学生の死亡について県教育委員会と連携し原因究明のための調査や検証をすることを第一義的な目的とし、その上で「いきっこ留学制度」の検証をすること。

②検証するための手段として、第三者委員会を設置すること。

③第三者委員会の委員は、子どもや保護者の声を反映するため、外部の専門家(特に臨床心理士など子どもの声を聴く専門家や福祉・保健・医療・人権・地域団体・マスコミなど)の第三者を公募すること。

④「いきっこ留学制度」の見直しを目的に設置するには、今までこの制度に関わった全ての人(子ども・保護者・里親・学校・同級生・部活の関係者など)当事者の声をヒアリングすること。

⑤現在継続している留学生や新規留学生への専門家による心理的サポート体制の構築(市独自の臨床心理士の雇用)し、離島留学生コーディネーターを早急に雇用すること。