2018.9.11一つに縛られず多角的な議論を
国境離島新法協議会の中で、白川市長が昨年から繰り返し提案してきた壱岐空港整備促進のための期成会がついに発足した。
白川市長は「現在就航中の航空機が老朽化し、新航空機への更新をする場合、現状の滑走路では短い。新機の運用を考えれば、滑走路は現在から約300㍍の延長が必要」と話している。また「滑走路延長は必要であり、地元から声をあげてほしい」とも述べている。この市長の提案を受け、先月29日の国境離島新法民間会議の場で委員らは市長提案を了承し、そのまま民間会議が期成会として発足した。
また期成会発足に山本県議は「委員は『このままでは空路がなくなるかもしれない。それではどうするのか』の考えを共有願いたい。この期成会で機運を盛り上げ、方向性を出していくことが大切」と述べている。
市から県知事への要望書では、壱岐空港の整備と滑走路延長案などを盛り込み、これまでに何度も手渡している。昨年11月に要望書を受けた知事の回答は「莫大な費用がかかる。採算はとれるのか。他航空路の事例も検証してもらいたい」と、事実上の不可を示した。一方、期成会発足の場で山本県議は「採算については知事が考えることではない」と一蹴した。
壱岐島民のほぼ共通した意見では「空港と空路は無くなってもらっては困る」であろう。しかし一方で「滑走路延長となれば、錦浜や筒城浜の環境への影響や、延長に伴う自然環境の消失になる」との考えもある。
ここでは多角的な考えが必要だ。現滑走路1200㍍のままで就航可能な現在就航中のQ200は老朽化と製造中止で未来はない。新機体として検討のQ400は大型で1500㍍の滑走路が必要となる。そこで考えられるのが1000㍍滑走路で飛べるATR機の検討が出てくる。しかし航空機会社の都合もあり、ATR機導入は簡単ではない。
Q400の為の滑走路延長工事等には100億円以上の予算がかかる。ATR機導入には約8億円のパイロット養成や時間も要するという。期成会では長期にわたる壱岐の将来で、何が重要かを議論願いたい。「空路は無くすことはできない。島の自然消失はすべきではない」が大きなテーマではなかろうか。
一つ気になる話がある。7月に国土交通省は「離島などを結ぶ地域航空会社5社の協業支援に乗り出す方針」を固めた。支援対象は、ANAホールディングス系のANAウイングス(東京都)や、日本航空系の北海道エアシステム(札幌市)と日本エアコミューター(鹿児島県)、天草エアライン(熊本県)、そして本市で就航しているORCになる。
協業支援により、機体整備の共同化やパイロット確保の協力などを柱に業務効率化と収支改善を図る。特にパイロットは業界内でも人材不足が深刻のため、PR動画を作り5社が採用活動で利用できるようにする。そうなれば1000㍍滑走路で飛べるATR機導入の可能性が高まる。国交省はこれら5社の合併や持ち株会社設立による経営統合を提言し、業務統合に繋がるよう期待を寄せている。実現すれば壱岐空港の様々な問題は解決されよう。
「滑走路延長しかない」あるいは「機体は現状のまま」のような極論にならず、知識と情報を得て、島と島民の今と未来に繋がるよう、また後世に負の遺産を残さぬような議論に徹してもらいたい。(大野英治)