2018.9.25道路工事施工に市職員が職権を乱用か

市議会定例会9月会議で12日の一般質問に登壇した音嶋正吾議員は「市職員としての倫理観を問う。職員の地位と役割を利用した職権乱用が行われているのではないか」と問題提議をした。問題としたのは、平成23年2月に竣工した、郷ノ浦町古城団地方面から壱岐の島ホール前を通る道路の上を横切る形で架かる「墓地歩道橋街路改良工事」の建設経緯についてのもの。担当市職員の身内が所有する土地に絡む優遇が疑われる。市長は「県の単独工事だ」とするが、音嶋議員は「市から陳情等がなければ県単工事はあり得ない」と関与を疑った。音嶋議員は「過去の工事だが、今後の市職員の職権乱用と倫理観を保つため、あえて公表し問うた」と述べた。

 現在、この墓地歩道橋はほとんど利用されず、道路奥は雑草が生い茂る状況。「何のために予算を割いて作ったものか。無駄な工事ではなかったのか」と音嶋議員は言う。また周辺の道路整備では、「当時の担当職員の身内が恩恵を受けるような状況が見て取れる」とも言う。
 問題の箇所は、墓地歩道橋の下を走る新郷ノ浦線街路。平成9年に事業認可が下り、平成9年度から平成23年度の約15年間かけて行われた事業。国道382号線と郷ノ浦港を連絡する道路で、郷ノ浦市街地の交通混雑の緩和や、交通安全の確保と走行性の向上を図るために作られた。事業費は全体で約38億6000万円となる巨額の事業であった。
 道路を横切るように上部には墓地歩道橋がかかる。道路工事以前の周辺は樹木が生い茂る土地で、周辺住民が管理する墓地への道幅約1㍍の通行路があった。しかし新郷ノ浦線の竣工に伴い、墓地歩道橋と歩道橋につながる道路幅は約3㍍に拡張された。しかし現在まで利用されたことはほとんどない。音嶋議員は「墓地遊歩道につながる幅3㍍道路の周囲は、市担当職員の身内が所有する土地が道路を囲むように点在する。なぜ利用しない土地に道路と歩道橋を作っているのか」と疑問を呈す。
 歩道橋の竣工について建設部長は「道路改良工事により、周辺道路の分断を考え、当初から計画されていた。周辺住民からの要望はない」と経緯を説明した。しかし平成28年に県の回答で「平成23年度に自治会から要望が出た」とあり、答弁に矛盾が起きている。また市職員の身内が、ほぼ同時期に道路周辺用地の買収をしており、その後に工事が始まっている。音嶋議員は「先々に宅地造成を見越した上での工事ではないのか」と不当関与を疑う行為という(図1)。
 また、新郷ノ浦線沿いにある墓地についても音嶋議員は疑問を追究した。「現在、墓地は道路沿いにある。墓地のブロック擁壁周辺は起工時期も違う」とする。新郷ノ浦線起工以前に、県は墓地にかかる擁壁を先に工事し、施工後は擁壁をブルーシートで覆い土砂を被せていた。後に道路施工にかかった業者が土砂を除く際にブルーシートが露出し、「なぜこのような処理をしているのか」と不思議に思ったという。
 音嶋議員は「道路沿いの墓地周辺の擁壁だけ数年も先に工事をするとは常識では考えられない」と首をかしげる。「組織には、権限はあっても権力はない」と憤り、さまざまな矛盾を抱えた工事に「過去の工事とはいえ、市職員の身内に利益となり得る行為は、後々の職員の倫理観に影響する。職員の立場を使った行為は職権乱用につながる」と警鐘を鳴らした。