2020.9.15避難所の駐車場満車、自分さえ良ければいいのか

 台風10号が本市に最も接近するとの予報が流れた5日、壱岐の島ホールの駐車場はすでに満車状態になっていた。

 当日、同ホールでのイベントはない。屋内駐車場には高級車などをはじめとする自家用車が、駐車場内通路からはみ出すほど停められていた。屋内の満車を見て、駐車車両は屋外駐車場の空きスペースを求めて全て満車となった。

 台風10号に備え、市は同ホールを避難所として6日午前9時から開設した。しかし、前日から満車状態にあったことから、毛布や食料を抱えて避難所に来た市民が利用するための駐車場が不足し、多くの避難者に影響が起きる事態となった。避難者のための駐車場が確保できなかったためだ。

 避難所開設前に満車状態を見た市は5日、ホームページで駐車車両の移動を呼びかけたが、その後も車両の移動はほとんどなかった。

 5日から同ホールに駐車した車両は、台風が過ぎ去った7日夕方ごろから徐々にホール外への移動を始めたため、台風による自家用車の被害を避ける目的で停めたものだったことは明白だ。

 事態を見た市民は「本当に避難が必要な地域住民が停められなかった。危険を伴う自宅へ戻るしかなく、帰宅した人もいた。人の命よりも自分の車の方が大切なのか」と怒りの声を上げた。別の市民は「防災のため、臨時シャトルバスで避難所までを巡回するなどできなかったのか。市はこの事態を想定できなかったのか」と不満を訴えた。

 事態を回避するための方法はいくらでも思い付く。市民が語っていたシャトルバス運行や、事前に駐車場の係りを配置するなど。また、早期に避難所や駐車場の空きを確認できるようSNSや市ケーブルテレビで情報を配信し、避難所の集中を回避するなど、今後の課題は多い。

 全国各地の災害避難では、地域住民の助け合いが報道される。自身の車を守るために避難所駐車場を使い、避難所開設前に満車になる事態など全国でも聞いたことがない。「自分さえ良ければそれで良い」の行動は、その地域の民度の低さを表す。今回の事態を恥ずかしい行為と認識し、今後も起こり得る台風などの災害に際して、人の命がなんたるかを考えねばならない。この程度のことにも気が付かず、このような我よしばかりでは、災害時の被害を最小限に抑えることなど未来永劫できるはずがない。(大野英治)