2021.1.26過ちを繰り返してはならない
年末年始にかけて、市職員らによる会食から起きた新型コロナウイルス感染のクラスター(感染者集団)は、市民に衝撃とともに混乱を巻き起こした。全国的なコロナの感染拡大は、誰もが感染する可能性がある。感染したことそのものが悪いのではなく、感染が拡大する行動を取ってしまったことが問題なのだ。しかも、その根源となるのが、自ら模範とすべき行動を示さねばならない市職員となればなおさらだ。
佐世保市では先月28日、市職員が新型コロナウイルスに感染した場合の公表方針を策定した。昨年12月、市職員3人の感染があり、方針を策定していないことから感染を明らかにしていなかったことが理由だ。
同市の方針では、「一般職員が感染した場合は原則として▽部局名▽年代▽性別▽居住地▽勤務先の施設名を公表する。氏名は公表しない。市長や副市長、教育長ら特別職が感染した場合は氏名を含め公表する」としている。他紙報道によれば「方針策定後の6日、市職員1人の感染を発表。その後、マスコミの取材に対し、策定前に他に3人が感染していたことを明らかにした」とある。
本市の場合、市職員から相次いで感染確認がされたにも関わらず、市の公表では日々感染者の人数のみ、県の公表でも性別や年代のみで、勤務先や部局名は「公務員」との表記だけだった。佐世保市と比べ離島である本市は、一度感染が広がると一気に拡大していく可能性がある。また、感染拡大以上に人から人へ広がる噂話や事実の拡散は早い。今回の場合も報道よりも世間の情報の方が早かった。
その中には、誤解や誤報も多く含まれた。ひとつの理由には、市長が市民に向けて現況や対応策を示す方針を話す会見がなかったことにある。また、佐世保市のように市職員が感染した場合の公表方針を決めていなかったこともあろう。思い起こせば、感染第一波の時にも市職員関連の感染や噂話も流れた。本来であればこの時に決めておくべきだったのではないか。感染者を晒すためではなく、市民の安全のため、それに加え責任と今後の万が一の対応のためだ。
また、今回の感染者発生を受けて、いまだ市からは経済支援策が示されず、対策会議も開かれていない。これも4月以降の感染第一波を思い起こせばわかるが、国や県が方針を示した後、その方針に沿って市が動くというのが大筋の流れだった。市の独自支援策も、国の方針が示される保証があるからこそできたようなものだ。
今回、18日の時点で緊急事態宣言を発した地域以外への国からの明確な支援方針は示されていない。そのことから、緊急事態宣言地域と同等レベルに近い感染者率となった本市は、市民に向けて何も経済支援策のメッセージを発せないのではないのか。市民の生活や事業者の経営は、もはや危機的な状況に向かいつつある。この状況でまず本市がやるべきは、受け身の対応ではなく、積極的な本当の意味での独自の支援策を打ち出すことだ。