2021.1.26【財政調整基金】5年後、わずか6千万円に

今年度から5年後までの市中期財政計画を公表

 市は昨年末、今年度から令和6年度まで5年間の市中期財政計画を市ホームページで公開した。その中で現在、約10億円ある財政調整基金残高が、5年後の令和6年度には6千万円にまで減る見通しがわかった。本市はコロナ禍により、観光業や飲食業を始め、農漁業や商業関連にも経済的影響の爪痕が残る。感染第3波が叫ばれる現在、財政の確保や長期的視野を見据えた事業の見直しなどの対応が必要とされる。さらに人口減少が進む中、市税や地方交付税などの収入が落ち込む予想などもあり、将来的な楽観はできない。積立基金としての財政調整基金も3年連続で取り崩しをするなど、財政健全化への課題は多い。

 

 本市の財政などの指針を知る上で重要となる「市中期財政計画」の最新版が先月末に更新された。市の事業や施策計画などの検証と見直し、財政状況や将来的な予算編成など財政運営の指針として策定されているものだ。計画は毎年、年末時期に更新され、5年間を見据えた計画とする。

 計画書によれば、「本市の実質公債費比率や将来負担比率などの財政健全化指標はおおむね健全に推移している」とある。一方で「長引く地方経済の低迷や人口減少などにより地方税等の自主財源の確保が難しい中、地方交付税や臨時財政対策債などへの依存度が高い財政運営が続いている。

 今後は、これまで整備してきたインフラ等公共施設にかかる維持補修や更新費用の増大、近年頻発する大規模自然災害、大型事業にかかる起債償還の本格化、加えて新型コロナウイルス感染症拡大防止対策など、さらに財政運営が厳しさを増す見込みであり、行財政改革は喫緊の課題」とし、厳しさが垣間見える。

 さらに、人口減少の影響で、市税や地方交付税等収入の大幅な落ち込みが想定されている。

 

今後5年間の収支見通し

 今後想定される人口減少と少子高齢化や、公共設備などの維持更新費用、新型コロナウイルスの感染状況や国の財政支援の動向など不確定要素は多い。このため、施策取り組みなどの状況から、「各年度における財源不足額の合計は5年間で約18億円となり、この不足する財源について財政調整基金及び減債基金の繰り入れで補てんする計画」としている。

 市の事業については、「選択と集中」を掲げた見直しが考えられる。「既存の計画に掲げる優先順位にとらわれることなく、事業の中止・延期・廃止など、これまで以上に踏み込んだ見直しを図ることにより、財源の確保に繋げていくことが求められる」とある。

 そのための推進計画の一つに、「ビルド&スクラップ」を掲げる。昨年までの計画では、不要なものを廃止し、その後に施策を決める「スクラップ&ビルド」だったものが、今回から「先にやるべき施策を決め、その必要な財源を確保するために不要なものを廃止する」に変更している。

 先に新たな取り組みに充てる財源を確保した後に、既存事業の優先順位を付ける手法は、財政健全化との乖離(かいり)や新たな事業への予算優先の考えもあるため、今後の動向に注視せねばならない。

 

地方債と基金の推移

 地方債(財政上で必要とする資金を1会計年度を超えて行う借入れ)で、本市は平成23年度末に285億円と四町合併以降最大の残高が、平成28年度末には260億円までに減少した。しかし、平成29、30年度に起きた豪雨被害などの影響で徐々に増加傾向となり、令和元年度末では約277億円の残高に膨れ上がった。

 市は「令和6年度末までに約222億円に減少」と予測しているが、コロナ禍や突発的な自然災害が起きた場合、地方債残高は増加するため、見通しは不明だ。

 さらに、財源に余裕がある年度に積み立て、地方自治体の貯金となる財政調整基金は、「3年連続で減債基金と併せて取り崩しをしており、本市の財政調整基金の令和元年度末現在高は約10億円。前年度末との比較で1億5千万円の減」とある。

 取り崩し額の推計では、令和6年度末までに残高は、6千万円程度まで著しく減少する見通しだ。本市の場合、適正な財政とするには、基金残高は12~24億円が必要なため、残高水準の確保には事業の大幅な見直しと予算の適正な振り分けなどがないと改善は厳しい。

 今年度の財政調整基金10億円がこのまま6千万円まで目減りすることになれば、これまでの市政運営の是非が問われそうだ。