2023.2.14責任転嫁と不作為の結果だ
昨年6月に突如、表面化した郷ノ浦町柳田地区の認定こども園建設計画は、先月30日に地鎮祭が執り行われたが、建設着工への道のりは今もなお難航したままだ。事業者である北串会の住民への対応の不備、市や県は、住民の意見を十分に聞かず責任転嫁で、問題の先送りが積み重なった結果ではなかろうか。
市は昨年5月、市議会全員協議会(全協)で同園建設計画が進んでいることを公表した。その中で、建設に疑問を持つ議員に対し、建設賛成の議員は「もう決まった計画だから、あれこれ言うな。これ以上の説明は聞く必要はない」という旨の意見で計画疑問の発言を抑え込んだ。全協で、どの議員がどのような発言をし、どのようにして意見を潰したのか、当紙記者はすべて把握している。
結果として昨年6月の予算特別委員会は、建設に賛成12、反対3(議長を除く)で可決した。この採決で「北串会の説明がない。なぜ公募せずに決まったのか」「土砂災害の危険対策が議論されていない」など疑問が上がったが、市は「安全対策はする。建設の認可は県であり、市は意見を言う立場ではない」など答弁した。一方、当紙の取材で県は「市が申請をしたので詳細は市に聞いてもらいたい」とし、市は「県が認可したこと」として、質問をたらい回しにした。
昨年7月22日には雲仙市にまで足を運び、北串会の中路英彦理事長のもとへ取材に出向いた。当紙記者は「住民説明会をすべきではないのか」と意見を伝えたが、納得いく回答は得られず、説明会を開催する意思すら感じなかった。
壱岐の将来のため市民団体は、昨年11月末までに建設場所反対の署名約3000筆を集めた。しかし、行政も事業者もこの民意すらまともに向き合うことはなかった。
北串会理事長と建設地所有者は2日、建設地に隣接する地主、大久保夫妻のもとに初めてあいさつに訪れた。手土産と同園のパンフレットを持参したが、大久保さんは突き返した。近隣住民として同会理事長に対し「本当に園として適切な場所と思っているのか。自分の子どもをこんな危険な場所に預けることができるのか」と問うたが、理事長は黙ったまま首をかしげるだけだったそうだ。
大久保さんは「なぜ、事前に説明に来なかったのか」と問うが、理事長は「島外に住んでいると思っていた」との回答に「現在は壱岐に住んでいる。調べればわかること。思い込みで仕事をしないでもらいたい」と厳しく意見した。「とにかく、きちんとした対応を求む。近隣だけではなく、まずは住民説明会を開いてもらいたい。その後、改めて話を伺う」と伝えた。
これら一連の流れを振り返り思う。事業者を含め市や県、議会の関係者すべてが「行政の不作為」により、住民の意思を無視してきた結果がこの状況ではないのか。