2021.4.20財源不足責任を問う各市民の動き

 市民団体「壱岐の未来」は、白川市長が発した市の財源不足に対して、市長の責任を問うリコール署名運動を進めている。その動きとは別に、市民のひとりが「市の財政がレッドゾーン(危険水域)になっているにもかかわらず、抜本的な対策を取ることなく、市民生活を不安と混乱に陥いらせ、市の経済を疲弊させた」として、市長や市の責任を問うと、市監査委員に対して監査の必要を要求している。

 リコールの署名を始めようと、準備を進める市民団体と住民監査請求を提出した市民は、別々の角度から市の財政状況と責任を問うているが、根本的な要因は同様のものになる。監査請求した市民は、過去10年間をさかのぼって市の財政状況を調べ上げ、今回起きている財源不足の問題はすでに数年前から始まっていたと主張している。このことから、市民に蔓延しつつある財政不安は市長の責任だけではなく、財政状況の悪化を見逃していた市議会、財政状況を示す市が提出した決算書を十分に精査しなかった監査委員にも責任があるとしている。

 結局、財政管理に携わるすべての者が職務を全うしていなかったとしており、そのことが現在の財源不足に陥った原因とする。そのような原因であるにもかかわらず、そのツケを市民に背負わせようとしている憤りから、市長に対して損害の補填を求め、必要な措置を取るように監査委員へ勧告を求めている。

 しかし、監査請求を起こした市民は「監査委員も執行部(市)寄りの考えを持つ委員で選ばれているようだ。その理由として、これまでにも数件の住民監査請求を提出したが、すべて却下されてきた」という。

 市民は一例として次の監査請求を挙げた。▽平成27年5月、イルカパークに対し、平成16年度より24年度までの9年間の累積赤字に1億2005万円の補助金が支出されている。事業経営の改善を求めず、観光客誘致を怠ったとして措置請求▽平成28年7月、芦辺小学校校舎改築工事設計業務費で、教育委員会の繰越明許費の懈怠(けたい)で措置請求▽同年10月、小中学校消防設備改修工事で、1社見積もりで入札、契約したとして市財務規則・会計法規の懈怠で措置請求。計8件の請求が却下されている。

 市政に対して、請求した市民は厳しい口調で語る。「度重なる監査請求の却下などから『眠る議会と死んだ監査委員』と私は例えるが、言い過ぎではない。十分な監視をしない状況が長期にわたり続いた結果、貴重な税金の無駄遣いが起き、今の財政不安につながる。監査委員は行政の防波堤に成り果ててはいないか」と語る。

 「財政が困難に陥れば、まず三役・管理職員・議員の給与やボーナスをカットすべき。今まで町に貢献してきた高齢者の福祉サービスは継続すべき。経営改革を進めるには人づくりを大切にせねば。人づくりを無視した改革は成功しない。経営改革はただ赤字を消すだけでなく、人の心の赤字も消すことだ」と言う。

 この言葉は重要かつ深い。果たして行政に理解され、通じるだろうか。監査委員は今回の住民監査請求をどう判断するのか。