2022.4.12自らに課す責任と決意の違い

 対馬市は先月28日、市議会臨時会を開き市長と副市長の給与減額を可決した。4月からの給与を比田勝尚喜市長は50㌫減額、俵輝孝副市長は20㌫減額。ともに減額期間は1年間とした。

 元市職員の20代男性が対馬市や県でつくる任意団体「対馬観光活性化協議会」の公金約6千万円を着服した問題で、管理責任があるとして比田勝市長は自らを減給に処した。この可決で、比田勝市長の給与は1年間にわたり、月額80万円が40万円になる。

 対馬市長の給与は、「対馬市市長及び副市長の給与及び旅費に関する条例」で月額80万円と定められている。ちなみに壱岐市長も市の条例により、対馬市と同額の80万円だ。

 当初、同月17日の対馬市議会定例会最終本会議で比田勝市長は給与の20㌫、俵副市長は15㌫を6か月間減額する条例改正案を可決していた。しかし、臨時会で比田勝市長は「最大限重い責任を自分に課した。より責任の重さを痛感した」として、自らの給与50㌫減額の理由を説明した。

 今回の事案は、比田勝市長が罪に問われたわけでも違法行為でもないが、部下の不始末に対して、最大限重い責任を自らに課すことを提案した。市政トップの決断に敬意を表したい。

 対馬市議会の減給案とほぼ同時期、本市では、民事訴訟判決による市長給与の減給案が議会に上程された。白川博一市長は、2016年の市長選で相手候補者を支援したとして「信頼関係を損なった」を理由に、恣意的に公共事業の入札指名回避を断行。長崎地裁は「裁量権の逸脱、濫用があった」と厳しい判決を下した。

 このことから、白川市長は「市政の混乱を招いた道義的責任を明らかにするため」として、任期満了となる2024年4月までの2年間、給与10㌫減額を自ら提案した。市議会定例会の先月23日、市長の提案を受けた議会は賛成多数で可決。

 対馬市の比田勝市長は、部下が起こした不祥事だったが「最大限重い責任を自分に課す」として、自らの給与を1年間50㌫減給。一方で白川市長は、自らが起こした入札指名回避による判決を受けて2年間10㌫減給。この歴然とした処分の差は何なのか。

 両市長の減給額合計は、白川市長が192万円。比田勝市長が480万円。比田勝市長は、半年間無報酬に匹敵する厳しい処分だ。

 自らに処分を課すことは難しい。自らへの甘さや保身、最低限の痛みにとどめたいなど様々あろう。両市長が下した自らの処分について、これ以上あれこれ言うつもりはない。

 白川市長の減給案を受けた市議会は「市長は賠償金支払いを終え、民事の責任は果たし反省している。市長自らが市民ファーストを貫く決意を受け止めた」と市長への理解を深めた。白川市長は「市の振興発展と市民の暮らし向上に全力で取り組み、任期を全うする」という。

 あとは、この結論と両市長の決意を見て市民がどう感じ、どのように考えるのかが気になる。