2021.6.08真の民意を問うリコールだったか

 白川市長と現市政に対しての是非を問う解職請求(リコール)活動が先月25日に終了した。リコール署名活動期間は30日間だが、新型コロナ感染の影響もあり、実質24日間しか活動できなかった。終わった出来事にif(もしも)を考える事で、真の民意が見えてくるかもしれない。

 今回のリコールの必要署名数は2万1832人(3月1日現在)の3分の1にあたる7278人。署名活動期間を終えての有効署名数は6603人で675人足らず不成立だった。リコール活動をした市民団体「壱岐の未来」は、市選挙管理委員会への署名簿提出を断念した。実質的な署名期間の24日間で、1日あたり約275人の署名が集まった計算になる。同団体の報告では、先月1日に市内で発生したコロナ感染確認以降、1日あたり平均約200人の署名を集めていたという。

 感染防止の6日間の戸別訪問停止がなければ、1日平均200人として1200人の署名を集めることができた可能性が残る。その場合、6603人に1200人を合わせて7803人となり、選管に提出できる目標数を突破していたのかもしれない。さらにリコール期間中には、発行人や代表者名が不明の「署名しない」チラシの全戸郵送による影響や、議員や各組織団体代表者名の記載による無言の圧力と思える内容、市内各事業所や行政各署では「署名に協力しないように」などの呼び掛けもあった。市民の判断を左右しかねない動きは、真の民意を導き出していたのか疑問でならない。

 署名活動を展開した市民団体も、当初に想定した受任者数にズレが起きた。同団体の発表で受任者数は160人とあるが、新型コロナ感染拡大や、しがらみなどから思うように署名活動をできなかったようにみえた。

 結果的に署名活動の30日間は、新型コロナの感染拡大に泣かされた。市民団体の体制のぶれ、署名を求める側と署名をさせない側のぶつかり合い、指示なのか忖度なのか、各組織や事業所では部下へ署名に協力しないよう声掛けも明暗を分けたのではなかろうか。

 署名数6603人を、これまでの選挙を参考に考えてみる。市内有権者数約2万千人の中で、約6千人は市政に興味がない傍観者か、自由に動きがとれない高齢者などであろう。残り約1万5千人が実際に是非を判断する人数と考えられる。うち6600人ほどは現市政と市長を否とした。市職員やその家族、各組織で起きた「署名しない」による影響数や、市民団体自体への反発で自らの意思とは違う判断をした人は少なく見積もっても約2千人。署名期間の関係で間に合わず署名できなかった人などは約千人くらいか。

 ここでif(もしも)を考える。市民自らの判断のみで民意を問うたならば、1万人ほどは市長や市政に対して何らかの意思表示があったのではないか。少なくとも市民の半数は市政に対して意思表示ができていたかもしれない。

 今後の市政運営は、有権者の半数が市政を厳しい目で見ているという思いで緊張感を持ち、真の民意とは何かを問い続けながら進めてもらいたい。それでこそ今回のリコールが意味のある活動となる。これらを忘れた時に、再び市民が島の将来のために立ち上がるだろう。