2023.7.04無計画案件に財政支出の疑問
市議会6月会議の議案に、県所有の「郷ノ浦港鎌崎地区」の土地取得があった。用地の面積は、約1万6千平方㍍におよび、取得価格は約6100万円。県の土地払い下げの見直しにより取得することになったというが、決して安くはない価格だ。
市はこれまで、財政の健全化と立て直しのためとして、さまざまな市民団体などへの補助金や市民サービスの見直しを断行した。さらに市は、私有財産を売却するなどの流れもある。このような中で突然、なぜ約6千万円もの土地を取得するのか。取得後にどのような活用をするのかの疑問がよぎる。
市の説明では「市議会3月会議の今年度当初予算にあげた。市議会で可決された案件」というが、3月会議を振り返り予算の話はあったが、どこの土地であり、何のための取得かの説明はなかったように記憶する。もっとも、市議会全員協議会などの非公開で話し合われたのであれば、マスコミも市民も知るところではないということにはなるが。
同議案は総務文教常任委員会が審議を行うことから、取得経緯などの内容を確認するため、取材に足を運んだ。
同委員会では、取得に至る経緯としての説明があった。市総務課は「旧郷ノ浦町時代に、同町より公共下水道南部処理区の終末処理場用地の要請に基づき、県が埋め立て整備を行なった。2010年に公共下水道事業計画が変更になり南部処理区は廃止、不要となった。しかし、当初の約束事項であり、県の港湾整備事業の中で他地域の整備もあり、市に払い下げするため整備を進めた。よって取得は義務に近い」と話す。
しかし、取得後の土地利用計画は白紙だという。市総務課は「差し当たって、現時点では具体的な利用計画はない」との説明に、委員から「今後の計画もなく購入するのは、市の政策上どうなのか。市有財産については売却や解体など検討するとした行財政改革に逆行していないか」と疑問を呈す。市は「具体的な計画はないが、取得後は企業誘致で協議する予定。駐車場や船舶の運搬に都合が良い土地」とする。
何とも不思議な議論だ。「計画があるから支出する。必要だから買う」など、一般的には目的があるからこそ出費するのが当たり前ではないのか。無計画に約6千万円を支出、一方で、市は市民団体などへの補助金削減や市民サービス低下とも思える一部予算削減などの行財政改革を進めている。以前からの県との約束ごととはいえ、「計画作成後に取得する」とは言えなかったのだろうか。
鎌崎地区の土地取得は「企業誘致のため」という。今後の利用計画が不明の中での取得案だが、利用法が見えたときに、当初の取得理由からかけ離れることがないように。ましてや、特定の企業だけが得をするような利用は論外とだけ言わせてもらう。