2023.7.04空港滑走路延長案に暗雲

市議会一般質問で市山議員が質疑、市は要望を続ける意向示す

 

 2017年4月に空港土木施設の設置基準が改訂され、国土交通省では滑走路端安全区域(RESA〈リーサ〉)を、令和8年度までに国内すべての空港で新基準 (国際基準)の適用が求められている。「航空機がオーバーラン(終端を超えて走行)あるいはアンダーシュート(滑走路手前に着地)した場合に、人命の安全を図り、機体の損傷を軽減させるため、着陸帯の両端に設けられる区域」としての安全対策だ。具体的には、滑走路の両端に規模に応じた安全区域を設けねばならず、壱岐空港の場合は90㍍確保した安全区域対策が必要となる。現滑走路では、同空港滑走路長1200㍍のうち、安全区域は35㍍ほどしかない。リーサ対策をすれば、滑走路長は1020㍍にまで縮められることになり、市が掲げる1500㍍の滑走路延長案に逆行する形となる。

 

市山議員、県への要望に危惧

 市議会一般質問で市山議員は「2016年以降、県知事に対して空港関連の要望を続けているが、空港滑走路延長と、リーサ配置の問題は密接に関連している。しかし、県や県知事から、リーサに関する説明はなかったように見受けられる。なぜか」と、本市に対して県の説明不備を問うた。

 総務部長は「これまで県から説明がなかったことに対して、大変遺憾に思うが、今後は本市と調整して進めていきたいとの言葉もあり、連携を密にして取り組んでいく」とした。

 これまで県知事への要望時に、市に対して説明がなかったことについては「今回のリーサ対応を一つの契機として捉え、これまで通りどの機種でも離発着できる最低でも1500㍍以上の滑走路を有する空港の整備に向け、引き続き積極的に要望活動を実施していきたい。知事の認識については、わからないところでもある」とし、「空港の整備にかかる調査費の予算確保を改めて強く求める」と述べた。

 市山議員は「2月28日の県港湾課の担当者から市への説明があったようだが、どのような話だったのか」と質問を続けた。

 総務部長は「2019年4月に公共防災法に滑走路への安全区域の設置が新たに追加され、壱岐空港の滑走路長1200㍍の場合、90㍍以上の安全区域が必要となる。経過措置が設けられているものの、令和8年度末までに実施設計などに着手する必要があるとの説明だった」と答え、リーサの対応が迫られていることがわかった。

 このことから令和8年度以降、同空港の滑走路長は現1200㍍から1020㍍にまで縮められることになる。市は、現滑走路の早急なリーサ対策とともに、これまで県に対して繰り返し求めてきた滑走路延長1500㍍案に関して、要望の継続か修正、撤回が迫られることになる。

 白川市長は「昨年8月23日に行われた国境離島振興協議会民間会議の空港整備促進期成会総会において、有人国境離島法の期限延長に加え、空港の整備について最低でも1500㍍以上の滑走路延長が必要であること、この整備について引き続き積極的に要望を行い、空港の維持と存続、地域振興のため全力で取り組むことが決議文として採択された。期成会をはじめ関係機関と連携を図り、今後も引き続き取り組む」と述べ、滑走路延長案の継続を明確に示した。

 さらに、「リーサ問題だけで終わるのではなく、この課題の改善策と合わせて、滑走路1500㍍延長につなげていければ。今後も、県知事への要望事項の上位に位置付けられる」と考えを述べた。

 

3月会議で植村議員、滑走路延長案に危惧

 同様の質疑は、市議会3月会議の一般質問で、植村圭司議員が市に今後の方針などを聞いた。

 植村議員は「壱岐空港整備は、毎年県知事に要望するが進展はない。一方で、2017年4月に空港土木施設の設置基準が改訂され、国内の全空港で対応のため、滑走路両端に90㍍確保の安全区域対策が令和8年度末までに必要となった。同空港も判断を迫られる可能性が高く、市はどのように対応を考えているのか」と、空港滑走路延長案について、市の方針に変わりはないのかとの疑問を投げかけた。

 市は「本市の空港では、安全区域は35㍍ほどしかない。しかし、今後も1500㍍滑走路整備の要望を続ける」と答え、これまでの方針に変わりはないことを強調した。

 市の回答を受け、植村議員は「国は2003年に空港の整備方針を示しており、必要性、計画の妥当性、実現性、効果などを必要としているが、本市はその整理も行っていない。県知事要望も大事だが、市の自助努力も必要。安全区域確保まであと3年しかない。現実的には千㍍滑走路を迫られる可能性もある。市は考え方を整理せねば」と危機感をあらわにした。

 一方、市は「現状滑走路から短くなるのは考えられない。延長案で続ける」と再度、方針を変える考えはない構えを見せた。

 

一貫して「非常に難しい」。県知事は難色を示す

 2016年から市は、県知事に対して要望書を提出、「滑走路を現在の1200㍍から1500㍍以上有する整備」への理解を求めた。さらに市国境離島民間会議委員を中心に、官民一体となった壱岐空港整備期成会の設立を進めていることなど、一歩進んだ構えがあることを付け加えた。

 要望を受けた中村法道前知事は「空港整備には莫大な費用がかかる。費用対効果を考えた場合、現状では滑走路延長は難しい。ただQ400の定員74人の半数であれば、1500㍍以下で離着陸は可能なのかどうか。また天草方面で就航している航空機ATRは、約1000㍍で運行している地域もある」とし、要望に対する前向きな返答は得られなかった。

 2018年8月29日、壱岐空港の整備等について協議を行う「空港整備促進期成会」が発足した。前年7月の市国境離島新法協議会総会で白川博一市長は「滑走路延長を検討し、要望を行う組織を国境離島新法協議会の構成員を中心に結成できないか」と期成会の立ち上げを提案。同年8月にも同民間会議総会の席で「滑走路延長の必要の声を地元から上げてほしい。期成会を作りたい」と提案し、協議会と民間会議は了承に至り、期成会発足となった。

 同年11月、県知事に対し3回目の空港滑走路延長の要望を提出した。しかし、中村前知事は「滑走路延長には莫大な費用がかかる。また公共事業として採択もある。具体的にどの機種で、どのように運行していくのかが必要になる。後継機選定に伴う必要な滑走路延長はどうなのかなど、見極めなければならない」と厳しい回答をした。

 以降、2019年の要望に対し中村前知事は「空港整備は巨額の費用がかかる。国の支援も必要不可欠だ。国が定めた採択条件である具体的な就航の見込みが必要になってくる。壱岐市では過去に用地確保が困難であったこともある。現時点での調査費も確保することは非常に難しい」と昨年の回答と同じく、滑走路延長には難色を示した。2020年、2021年には、要望書に記載はあるものの、県知事との意見交換はなかった。

 大石賢吾知事が就任した昨年、市は再び知事との意見交換を求めた。しかし、大石知事もこれまでと同様に「空港整備には莫大な費用が必要で国の支援が不可欠。しかし、国の採択条件が見込めるのか、非常に難しい状況ではないかと考える」と答え、一貫して県の考えに変更はない意思を示した。