2020.5.07死に体に向かいつつある島の経済

 全国的に感染拡大が懸念されている新型コロナウイルスは、6日まで政府による非常事態宣言を受け、不要不急の外出自粛や県境を越える移動自粛、飲食店などの営業時短や3密の回避などの影響で経済的なダメージは計り知れない。安倍総理大臣は、専門家会議の提言を受けて「接触機会の8割削減を目指し、一層の国民の努力が必要な状況だ。ぜひ今一度行動を見直していただき協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

 本市の経済基盤の一つに観光産業があるが、島外からの受け入れは激減し、ホテルや旅館などの宿泊施設は軒並み休業か、従業員を休業扱いにしての縮小営業で事態の収束までを乗り切ろうとしている。飲食店や他の産業もしかりで、何とか自助努力を重ねている。しかし、一方で6日を期限とする緊急事態宣言の解除や期間延長の判断について西村経済再生担当大臣は「まだ本格的な議論は行われていない。専門家に、分析・評価をしっかりしてもらい、対応を考えていきたい」と述べ、全く先が見えない事態となっている。

 市は先月17日の市議会で、第1弾の支援策として国費からなる1億4700万円の緊急経済対策事業費の補正予算を組んだ。事業内容には市民利用斡旋の商品券発売や宿泊利用、バスツアー企画などを決めたが、市民から聞こえてくる意見は賛否両論どころか否の声が多い。また、この事業費は全額国費からだが、出足の1弾目支援で市独自の施策と身銭を切る一般財源が投入されないのでは如何ともし難い。

 コロナ禍による収入減で市民生活や事業者売り上げは過去に例がないまでに困窮し、現在のところ給与に大きな影響がない公務員との格差に不満の声が聞こえてくる。

 市民の不満は、支援策だけにとどまらない。博多港と唐津港での検温検査は市の公表から14日が経過し、ようやく実施となった。この対応の遅さもさることながら、市が考える水際対策の方針がいまいちわからない。

 対馬市では先月20日、動画投稿サイト「ユーチューブ」に公式チャンネルを開設し、比田勝市長自ら観光や帰省などでの来島自粛を呼び掛ける動画の配信を始めた。動画で比田勝市長は「高齢者も多く、医療体制も脆弱。市内で感染者が確認されれば、十分な医療行為が受けられない状況に陥りはしないかと市民は不安を抱えている」と述べ、「感染が終息し、普段通りの人情味あふれる対馬のおもてなしをお届けするには、皆さま一人一人の思いやりの行動が欠かせません」と呼び掛け、来島についての市の方針を伝えている。

 五島市では、先月中旬には新型コロナウイルスの影響を受けた市民生活や経済支援に充てるため、議員報酬の一部を削減する方針を固めた。同月30日開会の臨時会に、議会発議の特例条例案を提出し、野口市長は自らと副市長、教育長の三役の給与を一部減らす考えを示した。また、野口市長は「県外」からの来島自粛も呼び掛けた。

 県内各自治体は、市独自の方針や施策を打ち出している。大型連休を目前にして、本市の方針は島外からの来島は自粛なのか推奨なのか。島外に向けた公式発表がない今、来島者が押し寄せる懸念はないのか。全てにスピード感と決断力に差を感じてしまうのだが。

 事業者や市民の生活は逼迫している。商品券や宿泊施設の市民利用など経済活性化策も否定はしないが、まずやらねばならないのは、事業者や市民の生活を維持させることではないのか。

 市は先月30日に今月2回目の市議会を開いた。議案には、市長ら3役の給与を20㌫カット。財政調整基金などの財源で、飲食業へ30万円支給などの支援策を上程した。しかし、本来ならばこの支援策が第1弾にすべきものだったと考えるが。

 なぜ、これほどまでに支援策と苦境に立つ市民との温度差、そして対応の遅れが起きるのか。島の経済が死に体に向かいつつある実感と恐怖感はないのか。(大野英治)