2020.5.07ようやく港の水際対策を実施(新型コロナウイルス感染拡大防止)

 九州郵船株式会社(竹永健二郎社長)は、先月23日より博多港と唐津港、印通寺港で新型コロナウイルス感染症の水際対策として検温を開始した。市は3月24日に開いた市航路対策協議会(以下、航対協)で、市の要望により検討に入り、先月9日に博多港と唐津港で検温を実施することを発表した。その後、唐津市からの要望があり印通寺港での検温も行うことに決めた。先月初めの5例(計6例)の感染者確認から約20日が経過し、ようやく水際対策が実施された。

 九州郵船が導入した検温器は、博多港のフェリーとジェットフォイルの切符窓口や乗船待合所に4台、唐津港に3台、印通寺港に3台の計10台。非接触型検温器で一人の検温は約1秒で終わるようだ。その場で発熱の有無が確認でき、検温により37・5度以上の発熱が確認された乗船者は、乗船を断るなどの対応をするという。今回の導入により、市民もひとまず安心できる水際対策が始まったといえる。

 九州郵船は、先月9日に検温器メーカーに発注をかけ導入の準備を進めた。市はその回答を受け、先月9日と10日の防災無線による島内放送で白川博一市長自ら「九州郵船では感染拡大を食い止めるため、水際対策として、各港において乗客すべての検温を実施することとしています」と告げた。しかし、一部市民の間では放送から数日後には全港で実施するという誤解が生じ、混乱も起きた。

 混乱の原因は、島内放送があった同日、長崎市と上五島町を結ぶ五島産業汽船(新上五島町)が、早急な水際対策の必要性から九州内の航路では初となる乗客の検温を開始したことと時期が重なったためだった。この時、市民からは「県内初で発覚し、6人もの感染者が発生した本市の方の検温導入がなぜ遅いのか」など、水際対策の遅れに不満の声が上がっていた。

 福岡市では、先月上旬から爆発的に感染が拡大し、同月7日から拡大防止のために緊急事態宣言を発令した。しかし、発令以降も感染者は減少の兆しを見せず、同月27日現在で350人もの感染者が確認されている。福岡市と本市は商業圏の関係で、観光交流人口も多い。本市からは人の移動も盛んだ。

 このような状況下から、福岡市と本市を結ぶ港の水際対策が急がれた。ところが先月14日の九州郵船本社への取材では「発注を終えたばかりで導入時期は未定。分かり次第伝える」との返答だった。結果的には、先月9日の検温導入の発表から11日後の同月20日に検温器が到着。22日までに各機器の温度誤差の確認などを終え23日から水際対策が可能となった。検温は、温度誤差確認の際に屋外での使用ができないことがわかり、屋内のみの使用となる。

 また、3月24日の航対協で九州郵船への要望として、サーモグラフィーによる乗客の体温検査実施を伝えている。九州郵船はこの時「検討する」と回答した。サーモグラフィーは、国際空港や国内各公共施設などで発熱を伴う伝染病疾患の簡易検査に用いられる。一般的には医療用として使われる場合が多く、導入するには高額で負担が重くなる。今後の導入について九州郵船は「長崎県からの貸し出しの申し込みをしている。割り当てがあれば導入したい」と答えた。

 県が貸し出しを予定している検温機器は、先月10日に方針を示している。県は、交通機関での防止対策を強化しようと、ポータブルタイプのサーモグラフィーや非接触式体温計などを購入し、貸し付け申請をした交通事業者に貸与するようにしている。