2020.7.22来たる自然災害に備えよ

 今月3日から降り続く豪雨について、九州各地、岐阜や長野などの広い範囲で大きな被害が出たことから、気象庁は「令和2年7月豪雨」と名付けた。本市では14日までの時点で大きな被害は発生していないが、わずか南に下った県内の佐世保や大村、佐賀県の一部で川の氾濫や洪水被害が起きた。

 さらに南に下ると、熊本県人吉市の球磨川沿いにある集落は、これまでにない川の増水と氾濫で家屋が流され、道路が崩落するなど甚大な被害が起きた。大分県日田市では、3日から9日までの総雨量は917㍉を記録。九州以外でも、岐阜県下呂市では、同期間に784㍉の総雨量を記録し、いずれもわずか1週間で7月の平年1か月分の2倍から3倍の雨量となっている。

 気象庁は全国で1万棟以上の浸水家屋があることを発表し、近年になく想像を超えた自然災害だったとした。気象庁が豪雨に名称をつけるのは、「平成30年7月豪雨」以来で、その前年には「平成29年7月九州北部豪雨」と名付けている。確率的にみれば、ほぼ毎年7月には全国のどこかで豪雨被害が発生することになり、もはや豪雨などの自然災害はいつ我が身に降りかかるかわからないことを認識し、気を引き締めなければならない。

 事実、本市で2017(平成29)年6月29日から30日にかけて降り続いた大雨で、勝本町の湯ノ本地区では道路脇の土手が地滑りを起こし、約30㍍にわたって道路が土砂で埋まった。芦辺町の谷江川沿いでも道路が数か所にわたって地滑りを起こした。今年3年ぶりに再建された壱岐四国八十八ヶ所霊場の1番札所として信仰を集める勝本町の金蔵寺は、建物後方からの地滑りにより倒壊した。翌週、再び発生した豪雨により、勝本町の城山公園後方にある道路は、アスファルトをえぐるように陥没している。当時の異常なまでの豪雨は、「50年に一度の記録的な大雨」と言われた。

 昨年9月28日、本市を再び豪雨が襲った。この時には芦辺クオリティライフセンターつばさ周辺の道路が冠水するなどの被害が発生したが、壊滅的な土砂災害はなく、ことなきを得た。しかし、雨量としては平成29年に起きた豪雨と同レベルとされ、わずか2年間で2度も「50年に一度の記録的な大雨」に見舞われた。

 今後、梅雨前線や台風シーズンに発生する大雨は何らかの被害を及ぼすのではないか、と考えていた方が良い。そして、洪水警報などを受けて避難所へ避難する場合、これまでとの大きな違いは、新型コロナウイルス感染防止対策もせねばならないことだ。まさしく二重苦を強いられる。

 本市の場合、万が一の避難所設置の際には、危機管理課がパーテーションを使って間仕切りをするという。しかし、用意される数には限りがあり、足りなくなることは容易に想像できる。現実的に考えて悠長に構えている場合ではない。災害時の対応で前面に立たねばならない市職員や防災に関わる市民らは、想像力を働かせて、いかなる場合も市民の安全が確保できる備えを常日頃から用意しておかねばならない。災害が起きたらどうなるのかを想像せよ。(大野英治)